8月の事故でロシア、原子力ミサイル爆発を隠蔽

1年以上前に発射実験に失敗

ビル・ガーツ氏

ビル・ガーツ氏

 ロシア北部の白海で8月に起きた原子炉爆発事故は、1年以上前に発射実験失敗で海底に沈んだ原子力推進式巡航ミサイル「スカイフォール」の引き揚げ中に起きたものだった。米国務省高官が明らかにした。

 爆発事故が起きたのは8月8日で、トマス・ディナノ国務副次官補によると、スカイフォールの引き揚げ作業中に原子炉が爆発し、作業を監視していた科学者ら7人が死亡した。

 ディナノ氏は「制御不能な核反応が起き、大量の放射性物質が放出された」と指摘。爆発は、ミサイルの原子炉が海水によって冷却し切れなくなり発生したものとみられている。

 同氏はまた、「問題は、第一に偽情報、第二はミサイルが1年間にわたって海底に沈んでいたこと、第三は、ロシアの最初の反応が隠蔽(いんぺい)だったことだ」とロシアに対する不信感をあらわにした。

 ディナノ氏によると、ロシアは隠蔽工作の中で、爆発地点の付近で収集した放射線監視所のデータを遮断した。データは通常、包括的核実験禁止条約(CTBT)機関内の部署で、ウィーンに本部を置く「国際監視システム」に送られる。

 スカイフォールは、核弾頭搭載可能で、射程は無制限とされている。プーチン大統領が2018年3月に鳴り物入りで発表した五つの戦略核兵器の一つだ。

 現在、これらの兵器を監視する条約などは存在せず、ディナノ氏は「原子力巡航ミサイルは、長時間にわたって上空にとどまることが可能。これらのミサイルは、大きな不安定要因だ」とロシアが意欲的に進める核兵器開発に警鐘を鳴らした。

 放射線による汚染はそれほど深刻ではないとみられているが、ディナノ氏は、事故後のロシアの対応に懸念を表明している。

 国営原子力企業ロスアトムが発生から2日後になってようやく発表、国営メディアなどからは、軍事演習、暴風警報システムの誤作動、毒性のある化学物資の流出などの偽情報が流された。

 シンクタンク公共政策研究所の上級アナリストで核兵器専門家のマーク・シュナイダー氏は、スカイフォールは「プーチン氏の無責任ぶりを象徴するもの」であり、「造られるべきでなかった」と主張、「開発が成功する可能性は低く、放射性物質の拡散は避けられない」とロシアが進める核兵器開発を非難した。