金沢の神社「御朱印ツアー」で外国人と交流

金沢星稜大学女子短大の学生たち「おもてなし小娘」結成

 金沢を訪れる外国人観光客に、神社参拝の作法を知ってもらい、日本の伝統文化に触れる機会を持ってほしいと、金沢星稜大学女子短期大学部の学生5人が「おもてなし小娘」を結成。今月14日、「金沢の神社にて御朱印集めツアー」を企画し、フェイスブックなどで参加を呼び掛けたところ14人が参加し、交流を深めた。ツアーを通して、学生たちは改めて語学の大切さを痛感することができ、同時に日本文化を見直す機会にもなった。(日下一彦)

語学の大切さを痛感、日本文化を見直す機会に

 同企画に取り組んだのは2年生5人。金沢を代表する観光名所の兼六園を訪れる外国人は約43万人(18年、石川県の統計)をターゲットに、金沢駅やゲストハウス、フェイスブックでイベントを周知したところ、フランス人やドイツ人、イギリス人、インド人、ベトナム人など14人が応募してきた。年齢は20歳代から30歳代後半で、男性6人女性8人だった。国特別名勝の兼六園周辺に鎮座する金澤神社と尾山神社、石浦神社、護国神社の4カ所を参拝した。

 同ツアーを企画したのは、経営実務科2年のМ・Hさんで、学業の傍ら、昨年春から金澤神社で巫女(みこ)のバイトをしている。「北陸新幹線の開通で参拝に来られる外国人が多くなったが、手水のやり方や二拝二拍手一拝など、何も分からずにやっている」ことに気付いた。「手水は参拝する前に、手と口を水で清めることです。ただ水をすくって手を洗うだけだったり、口をゆすいでそのまま“ペっ”と吐き出したり、飲み水と間違えて飲んだりと、その意義や作法が伝わっていません。神社には英語の表記もありません。これではいけないと思い、御朱印ツアーを始めました」と語る。

金沢の神社「御朱印ツアー」で外国人と交流

「おもてなし小娘」は外国人と共に、金澤神社の神官から神道について説明を受けた(金沢星稜大学女子短期大学部「おもてなし小娘」提供)

 同じゼミで異文化交流を学ぶ4人に企画を持ち掛けた。同活動は今年度の大学コンソーシアム石川が主幹とする「学生による海外誘客チャレンジ事業」に採択され、「おもてなし小娘」としてスタートすることができた。

 「御朱印は参拝した証しとして戴(いただ)くものと分かり、気持ちの持ち方がとても大切だと気付きました。御朱印帳は記念にもなるし、後で見返してその神社のことを思い出すことができるので、いいものだなあと思いました」(M・Nさん)。「御朱印」は彼女たち世代の間では京都を中心に静かなブームになっており、着物姿で散策しながら、御朱印を集めるのが魅力という。

 神道の専門用語を英語で表現するのは、かなり厄介ではないかと思ったが、立派な指南役がいるそうだ。バイト先の金澤神社には高校時代に習った恩師が禰宜(ねぎ)として勤務しており、留学経験もあって英語に堪能で、神道の英語表現を習うことができた。

 また、御朱印が外国人を感動させているという。というのは御朱印は参拝すると、その場で一枚一枚毛筆で丁寧に手書きされる。「手渡されるまで少し時間がかかりますが、それを受け取った外国の方はとても感激しています。金澤神社では金箔(きんぱく)も付いているので喜ばれています」(М・Hさん)

 活動に当たって、6月に彼女たち自身で参拝するプロモーションビデオを制作した。「最初にそのビデオを見てもらい、『二礼二拍手一礼』をマネてもらいました。四つの神社を巡るにつれて、拝礼の仕方がとてもきれいになり姿勢も良くなって、見ていてとてもすてきだなと思いました」(М・Yさん)。

 初めての体験だけに想定外の質問も飛び出し、戸惑うこともあったという。「尾山神社では前田利家公の像があり、『あれは誰』と尋ねられて即答できませんでした。また、ちょうど七五三のシーズンと重なり、それをうまく説明できないことがありました」(U・Yさん)。中には「どうして浴衣ではないのか」と問われるなど、日本人でも答えるのに窮する質問も飛び出した。

 ガイドした感想を聞くと、「神社に置いてあるものはどんなものにも興味を持たれるので、英語で説明できるように準備をしておくことが必要だと思いました」(М・Yさん)、「神社は世界的に見ても長い歴史があります。これまで受け継がれてきたものに関わって、海外の人たちに広めることができるのはとても嬉しいです」(М・H)。来年卒業とあって、5人は「ゼミの後輩に引き継いでもらいたい」と思いを託している。