124カ所にウイグル強制収容所 反体制組織調査
中国政府は西部の新疆ウイグル自治区でウイグル族弾圧のため、少なくとも124の強制収容所、数百の強制労働キャンプ、刑務所を設置していることが、ウイグル族反政府組織の調査で明らかになった。
中国、軍施設に火葬場建設か
ホロコーストの再現懸念
ウイグル独立のために活動する「東トルキスタン国民覚醒運動」が、商業衛星写真を利用した情報収集と、自治州内の住民からの報告をもとに9カ月かけて行った調査によると、自治区内で新たな収容所が設置されている。
収容所建設は、監禁、強制的な思想教育によって独立運動、反政府活動を鎮圧するための中国共産党の計画の一環。
22カ国の代表が10日、人権理事会など国連の人権機関に書簡を提出、中国西部での人権抑圧を停止するよう求めたばかり。日本、オーストラリア、カナダ、英仏独など欧州各国が署名した書簡は、「新疆でのウイグル族など少数派に対する大規模収容所への恣意(しい)的な拘束、広範囲に及ぶ監視と制限」に懸念を表明した。
覚醒運動は、新疆での自由で民主的な独立国家建設を求めており、収容所など少数派弾圧の施設の地図を作成し公表した。それによると収容所は、北部の区都ウルムチ周辺地域から西部カシュガルにかけて、自治区全域に広がっている。
米政府当局者は、ウイグル族などの収容施設は、第2次世界大戦中のナチスドイツや冷戦時のソ連の施設をもとにしたものだと指摘した。
強制収容の目的は、体制に敵対的と見なした個人に国家の理念を強制的にすり込むことだ。中国の場合、共産党支配体制にとって「有害」と見なされると、拘束され、拷問など非人道的な扱いを受ける。
米当局者は、強制収容に対する抗議行動が起きれば、大量虐殺につながる恐れがあると指摘、「もう一つのアウシュビッツが出現する可能性がある」と懸念を表明した。
覚醒運動の創設者サリー・フダヤール氏によると、調査の中で自治区内に37の軍事施設が確認されたことについて「軍事施設に収容されている人々が、基地内で火葬場を建設させられている可能性がある」とした上で、「21世紀のホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の準備をしているのではないかと懸念している」と述べた。
調査によると、中国が再教育と職業訓練のためと主張する強制収容所に加え、193の刑務所と、新疆の開発を任務とする準軍事組織「新疆生産建設兵団」が運用する労働キャンプ66カ所も確認された。
新疆のウイグル族は約1000万人で、大部分がイスラム教徒。バスビー米国務次官補(民主主義・人権・労働担当)は昨年12月、上院公聴会で、2017年4月に開始されたとみられる弾圧で、80万から200万人以上のウイグル族、イスラム教徒が収容されたと証言した。
新疆ウイグル自治区は東トルキスタン共和国として知られていたが、1949年に中国軍が侵攻、併合された。
中国政府は、新疆での取り締まり強化を、分離主義者、テロリズム、宗教根本主義の排除が目的だと主張する。
新疆での共産党支配を確立するため中国政府は、ウイグル族の同化政策を進めてきたが、習近平国家主席が進める強硬策の一環として方針を転換、弾圧、大量拘束、思想教育が強化されている。