火災の露潜水艇、特殊任務に従事か

海底光ケーブルから情報を傍受

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ氏

 ロシア国防省は声明で、海床を調査する原子力潜水艇「ロシャリク(AS12)」で1日火災が発生し、14人が死亡したと発表した。事故が起きたのはロシア領海内とだけ発表されたが、報道によると現場はバルト海。海底での特殊任務、水中ドローンを支援する極秘作戦に関わっていた可能性が指摘されている。

 ロシア国営メディアによると、ロシャリクは、海底通信ケーブルから通信を傍受するなど深海での特殊任務のために建造された。通常の潜水艦よりも深い6000㍍まで潜ることができ、原子炉1基を搭載、時速55㌔で航行が可能という。

 ロシア政府は4月、核搭載原子力水中ドローン「ポセイドン」を搭載する大型原潜「ベルゴロド」の進水を発表した。露紙イズベスチヤの2017年4月の報道によると、ベルゴロドはAS12とは別のロシャリクAS31を搭載することも可能。露軍事科学院のバディム・コジューリン教授は、ベルゴロドが18年から「ロシャリクAS31自律型深海基地」を搭載すると述べていた。

 コジューリン氏はベルゴロドについて、「軍が北極海の海底に建造を進めている全地球水中環境監視システムの配備を支援する」と指摘、ロシアが北極海域での監視強化を進めていることを示唆した。

 英BBCによると、死者14人のうち7人は海軍大佐で、2人は「ロシアの英雄」の称号を持つ。プーチン大統領は「大変な損失」と述べた。

 国防総省で核政策の立案に当たっていたマーク・シュナイダー氏は、「これは、非常に重要度の高い軍の研究計画であることを意味する。純粋な科学的研究ではないと思う。ロシアの潜水艦の安全性はソ連時代から低いからだ」と述べ、事故を起こした潜水艇が非常に重要な任務を負っていた可能性を指摘した。

 潜水艇は、北極海や日本海の海底で情報活動を行っているとみられている。

 ラジオフリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティーによると、潜水艇はロシア海軍の探査機関「深海研究局」の指揮下で特殊任務に当たっており、深海研究局は、極秘作戦に従事する潜水艦隊の特殊作戦を実施しているという。

 ロシャリクは1990年代末に配備され、ロシアによる北極海域での主権拡大への取り組みの一環とみられている。

 米紙ワシントン・タイムズは、ロシャリクが、大西洋、北極海に広がる約90万㌔の海底光ケーブルから情報を傍受しており、情報機関、軍特殊作戦のための情報収集任務に当たっている可能性があると報じた。