韓国メディアよ、自己批判もしながら頑張れ

山田 寛

 

 韓国メディアも最近急に日韓関係を心配し、文在寅政権の日本無視を批判し出したが、政府批判と同時に自省もしてほしい。

 私は新聞記者時代、韓国人記者に親近感を持っていた。40年前のタイ駐在時、金さんという、日韓併合下で育ちかしこまった日本語を話す年配記者に、親切にしてもらった。カンボジアでポル・ポト革命政権が打倒され内戦となった時、彼はゲリラ勢力に手づるを持ち、私に紹介してくれた。30年前の米国駐在でも、韓国人記者と親しくなった。

 だが近年の韓国メディアは???が多過ぎだ。

 先日、韓国国会の外交統一委員長ら5人が来日したが、酷(ひど)く冷遇されたとし、韓国メディアの東京特派員団に「韓日関係がどれほど悪化しているか、東京に来て初めて実感した」と、驚きを表明した。(中央日報日本語版など)

 今更「想像以上」と驚くとは。東京特派員たちは何を本国に伝えてきたのか。メディアの多くは、文大統領が「日本側は歴史問題を国内問題に利用」などと的外れなことを言っても唱和してきた。東京特派員が「令和」を日本の軍事大国化につなげるムリムリ解釈を披歴した新聞もある。

 昨年末の韓国軍艦レーダー照射事件でも、韓国当局の不自然な“大本営発表”に疑問も呈さず、調べる気も全くない様だ。

 きちんと「反日する」にも、日本の反応や主張を正確に伝えることが大事なのに。

 また先月末の中央日報は、「日米蜜月の横で、韓国外交部は外交懸案より韓米首脳電話会談内容の流出事件に埋没」との批判記事を載せた。「外交部当局者が記者団と会い59の質問を受けたが、うち58は流出事件関連だった」とし、外交部が視野を外部に転じる余力があるか疑っている。

 でも58の質問をした側の視野はどうなのか。機密漏えいも問題だが、文氏がトランプ大統領に訪韓を懇願したと暴露されても、今更大影響もなかろう。他の重要問題も質問してほしい。

 以前ソウルで、米元高官を囲んだ韓国人記者たちが、何とか日本批判の言葉を吐かせようと躍起になっているのを見た。自らの筋書きへの強い執着だった。

 最近中国で開催されたサッカーU18大会で、韓国選手がトロフィーを踏みつけるポーズをとって優勝を取り消された事件。韓国側でもチーム非難の声が多かったが、逆反発する記事も目についた。

 かつてWBC野球選手権で、イチロー選手の発言を韓国メディアが曲げて報じて憎悪を煽(あお)り、韓国チームがマウンドに太極旗を立てて力を誇示したのを思い出す。

 韓国は時々、国際スポーツ大会でナショナリズムの過剰発散を指摘されたが、韓国メディアは自国擁護に熱心だった。きちんと「ナショナリズムする」ためにも反省が大事だ。

 誇りや自尊心を抑え、自己批判もしなければ。国際NGO「国境なき記者団」(RSF)が発表した2019年版「報道の自由ランキング」で、韓国は180国・地域中41位。米国の48位、日本の67位より上である。17年版(朴前政権時代)は韓国63位、日本72位、18年版は43位と67位だった。韓国メディアは自国の順位を誇ったが、①RSFの全体も日本、韓国の調査員も左派色が強い(RSFは東京新聞・望月記者を応援し、日本政府批判の声明も出した)②韓国の調査員の自己評価が甘い――結果だろう。米NGO「フリーダムハウス」の17年の報道自由調査では、日本は「自由」、韓国は「部分的自由」である。

 「日本もエラソーに言えるのか」と反駁(はんばく)されるかもしれない。だが韓国の民主主義は正念場を迎えていると思う。韓国メディアに、自省しながらぜひ頑張ってほしいのだ。

(元嘉悦大学教授)