中国、米国非難する好戦的動画

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ氏

 中国の動画共有サイト「西瓜視頻」に「中国は、長期戦に備えなければならない」と主張し、米国を非難する好戦的な動画が投稿された。貿易戦争を全面的な衝突へとエスカレートさせようとするもので、中国共産党が、対米強硬姿勢に傾いていることを示すものだ。

 動画を作成したのは、中国のプロパガンダ組織とされる「マーズ・ファランクス」。中国宣伝工作の専門家によると、このような動画が投稿されたことは、中国共産党の米国への政策が強硬姿勢に傾斜していることを示す。

 動画では「トランプ氏の『無礼で自己中心的な』戦略は、小さな国に対しては効果的かもしれないが、中国に対しては効果はない。(共産党機関紙・人民日報系の)環球時報に掲載された記事が主張しているように、米国が戦いたいというなら、最後まで戦う。太平洋が二分されるまで戦う」と米国に対する好戦的な主張が目立つ。

 西瓜視頻の視聴者は約3億人とされる。インターネット・放送コンテンツを監視する宣伝工作機関、国家ラジオ・テレビ総局の監督下にあり、投稿された動画はすべて、中国共産党幹部らの承認を受けたものとみられている。

 米国の対中関税について「これは近代の帝国主義的国家からの露骨な脅迫だ。軍事力で脅かすことができず、経済的手段に訴えている」と強く非難。「国家の将来にかかわる問題であり、中国はいかなる譲歩もしてはならない」と、撤退抗戦を訴えた。

 中国企業と取引のある米企業、ボーイング、ウォルマート、ゼネラル・エレクトリック(GE)、フォード、マクドナルドなどに制裁を科すことを要求、米財務省証券の売却や、ハイテク製品に不可欠なレアアース(希土類)の対米輸出制限をも求めている。

 米国在住の中国人実業家、郭文貴氏は、好戦的な動画の投稿は、「人民の忠誠心を鼓舞し、ナショナリズムをあおるための心理戦」であり、「毛沢東時代からの常套(じょうとう)手段」と指摘、中国共産党の宣伝キャンペーンの一環との見方を示した。

 緊張が高まれば、台湾攻撃、香港での取り締まりの強化のための口実に利用され、南シナ海での米軍との衝突につながる可能性もあると主張、「米国との衝突に備えるよう求めるメッセージが込められており、深刻に捉えるべきだ」と警告した。