G20へ、環境政策出揃う
大阪市で28、29の両日に開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の重要テーマとなる環境問題。政府は、5月31日に海洋プラスチックごみの削減に向けた「行動計画」をまとめた。地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に基づく長期戦略も、近く閣議決定される。G20の場で、「環境と経済成長との好循環」に力点を置く日本の特色ある取り組みを国際社会に向け積極的にアピールする方針だ。(政治部・岸元玲七)
海洋プラごみと温暖化対策
経済成長と両立目指す
安倍晋三首相は31日の関係閣僚会議で、海洋プラごみ問題がG20サミットの「最大のテーマの一つとなる」と指摘し、「問題の解決には世界全体での取り組みが不可欠。各国が実効性のある対策を実行に移していくことが求められる。議長国としてリーダーシップを発揮していく」と強調した。
行動計画には①プラごみの流出防止策②陸域での散乱・漂着ごみの回収③海中で分解されるプラスチックの開発④途上国への廃棄物管理・リサイクル技術支援――などが盛り込まれた。
流出防止策としては、ペットボトルを100%再生利用することを目標に、自動販売機横にリサイクルボックスを設置する取り組みを支援。ポイ捨て禁止条例違反の取り締まり強化や、日々のごみ出し・分別回収を徹底する。
プラごみ対策に率先して取り組んできた欧州は、2021年までにストローやカップなど使い捨てプラスチック製品自体の流通を禁止する。これに対し日本は、「重要なことはプラごみの海への流出をいかに抑えるかであり、経済活動を制約する必要はない」との考えに基づき、製品を使い続けながら海に出さない対策を強化。これには途上国も取り組みやすいという利点もある。
また、海洋プラごみの主要排出国とされる中国やインドネシア、フィリピンなどアジア諸国や途上国に対して、海洋ごみの回収や国別行動計画の策定、リサイクル施設の導入支援などを推進する。
環境政策のもう一つの柱である、地球温暖化対策については、「パリ協定」に基づく長期戦略を策定している。
政府は既に2016年5月に閣議決定した「地球温暖化対策計画」で、温室効果ガスの排出量を30年度に13年度比26%削減するとの中期目標と、50年までに80%削減するという長期目標を立てた。
環境省によると、日本の17年度の温室効果ガス排出量は13年度比で8・4%の減少にとどまっている。4年連続で減少しているが、削減幅は小さく中期目標はもとより、長期目標を達成するための戦略が不可欠だ。
5月末までに固まった長期戦略の最終案では、長期目標の達成にとどまらず、先進7カ国(G7)では初めて、今世紀後半のできるだけ早い時期に化石燃料から脱却する「脱炭素社会実現」のビジョンを打ち出した。
具体的な排出削減対策としては、再生可能エネルギーの主力電源化、二酸化炭素(CO2)の再生利用の推進、水素エネルギーの活用などの技術革新により、温室効果ガスの大幅削減と経済成長を同時に目指すことに力点を置いた。同じ立場から、環境などに配慮した企業に投資する「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」の拡大にも積極的に乗り出す。
政府は有識者懇談会の提言を土台に、長期戦略案を4月23日に公表。その後、経団連や経済同友会など経済団体や環境団体、個人などから寄せられたパブリックコメントを経て最終案が固まった。既に自民党の環境部会でも検討され、今月4日の同党総務会での了承を得た後に、閣議決定される手はずだ。
渡嘉敷奈緒美・同党環境部会長は、最終案について「脱炭素社会の実現を明確に押し出したことが新しい」と述べ、「持続可能な社会の実現には環境と成長の好循環が大切だというメッセージが表れている」と評価している。