架空話で済まぬ白頭山噴火


地球だより

 北朝鮮世襲政権2代目の金正日総書記が生前に力を入れて制作させていた映画は、その全てが体制宣伝の道具だったと言われる。自身の生誕地だと宣伝した中朝国境沿いの白頭山と同名の映画では、日本統治下の朝鮮を舞台に抗日パルチザンのリーダーだった父、金日成将軍の戦いぶりが描写された。息子の金正恩氏の場合、韓国の文在寅大統領と実際に登頂し南北統一を誓い合った。同山は世襲独裁にうまいこと利用されてきた。

 その白頭山が今度は同名の韓国映画として登場する予定だ。ただし、こちらは活火山である同山の噴火が差し迫り、人々が危機回避に奮闘するという設定で、主人公は噴火を防ごうと活躍する韓国人と北朝鮮人。恐らくは南北が力を合わせ災害に立ち向かう姿に映画館を訪れる観客は感動するのだろう。近年、韓国映画は実力をメキメキと付けてきたと評判だが、監督には対北融和派が多く親北感情刷り込みのテクニックもなかなかのものだ。

 映画はどこまでも映画と言いたいところだが、噴火の問題はそうも言っていられないようだ。先日、英国で開かれた国際学会では白頭山周辺でここ3年間に地震が頻発し、地表が最大7センチ隆起したと報告された。北朝鮮の専門家が蓄積データを英国に提供し分析を依頼してきたほどだというから尋常ではない。映画のようにハッピーエンドとは限らないのだから北は包み隠さず情報公開し周辺国と連携を―と言いたいが、やはり体制維持やプライドが邪魔して断るだろうか。

(U)