韓国の中高年、「反北親日」動画に熱中

 50代、60代を中心とする韓国中高年が近年、動画共有サービスYouTube(ユーチューブ)で親北反日路線を強める文在寅政権を批判するトーク番組などを頻繁に視聴していることが分かった。番組は北朝鮮の軍事的脅威に無頓着だったり、平気で日本との関係悪化を放置する文政権を痛烈に批判するものもあり、反文政権感情が強い中高年の鬱憤(うっぷん)晴らしにつながっているようだ。
(ソウル・上田勇実)

文政権下で鬱憤晴らし
「徴用工判決は恥」の投稿も

 「22年をメドに進めている朝鮮半島有事における在韓米軍作戦指揮権の米軍から韓国軍への移管について、文政権を支持する国内左派は軍事主権の復帰などと言っている。まるで朝鮮王朝末期の衛正斥邪運動を見ているよう」

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元徴用工訴訟で韓国大法院の判決を批判するYouTubeのチャンネル「ペン・アンド・マイク鄭奎載TV」

 これはYouTubeに韓国人が投稿した時事問題動画の中で、再生回数トップのチャンネル「神の一手」に先月末出演した元外交官の言葉だ。

 「戦時作戦統制権」と称されるこの指揮権を米軍に移管させる問題は北朝鮮の脅威に対する抑止を弱める恐れがあることから延期され続けてきたが、親北政権発足で再び移管されることになった。

 この元外交官は「自主国防を強調してきた盧武鉉・文在寅の2人が韓国大統領になったのは韓国にとって大きな不幸」と指摘。現実の脅威より理念的価値を重視する反米主義は朝鮮版尊王攘夷とも言える「衛正斥邪運動に逆戻りした」かのようであり、「なぜ2人の大統領は21世紀に就任したのか」と揶揄(やゆ)した。

 韓国メディアが業界関係各社のまとめとして伝えたところによると、韓国人がYouTubeに投稿した時事問題チャンネルのトップ10(登録者基準)には「神の一手」をはじめ韓国保守系論客たちによるものがズラリと並び合算すると200万を超える。再生回数基準ではトップ3を保守系チャンネルが独占している。視聴者の多くは中高年だ。

 しかも50代以上のYouTube利用者の総視聴時間伸び率は昨年末までの約1年間に24%増に達し、10代の11%増に比べ倍以上。ある専門家は「地上波の3大キー局やケーブルテレビの左傾化で親政府論調が広がる中、文政権の政策に不満を抱く中高年がスマホを使いこなしてYouTubeのチャンネルで鬱憤を晴らす実態が浮かび上がる」と指摘した。

 発信元もインターネット空間を利用していることが強みだ。国政介入事件で弾劾される前は朴槿恵前大統領を支持してきた保守系メディアも、革命を成功させたように交代した文政権から「積弊」とレッテル貼りをされ、経営責任者の人事や番組編成などで圧力を受けてきたと言われる。しかし、個人が運営し比較的自由に情報発信できるインターネット動画の場合、規制を受けにくい。YouTubeもその一つだ。

 中高年が熱中するチャンネルの中には日韓関係で韓国の非をズバリ指摘するものもある。元経済紙主筆が投稿・運営する「ペン・アンド・マイク鄭奎載TV」の鄭氏は今年1月の動画で、最大の懸案である元徴用工問題について「朝鮮人徴用工が搾取されたというのは偽り。最後の1年間に募集・斡旋・徴用というプロセスはあったが、余裕しゃくしゃくで写真に収まるほどだった。今の韓国は日帝(植民地支配した日本)を仮想敵国と見なしている」と述べた。

 その上で鄭氏は昨年10月、日本企業に対する賠償命令判決を確定させた韓国大法院(最高裁)を「民族の裁判所、人民の裁判所、民衆の裁判所に転落した」と批判。「韓国の判決は世界で徐々に認められなくなるだろう。今、恥ずかしいことが起きている。徴用工問題の真実を知らなければならない」と呼び掛けている。

 元徴用工訴訟に関連し個人請求権が解決されたとする日韓請求権協定への見解を示さないなど日韓関係で曖昧な姿勢の韓国政府を批判し始めた保守系大手紙も、さすがにここまで突っ込んだ主張はしない。韓国では今まで決して日の目を見ることのなかった親日言論の自由がここにはあるようだ。