中国新疆に衛星破壊レーザー基地

衛星写真の解析で発見

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ氏

 衛星写真の解析から、中国の新疆ウイグル自治区の衛星破壊レーザー兵器基地の存在が初めて明らかになった。基地は、自治区の区都ウイグルの南、約230㌔にあり、インド軍退役大佐で衛星写真分析の専門家ビナヤク・バット氏が発見した。

 中国は、人工衛星を確認、追跡するための基地を全国に設置している。バット氏は「正確な衛星の経路などが分かれば、5カ所に配備した指向性エネルギー兵器で任務を果たすことができる」と指摘、追跡基地は衛星破壊兵器の一部との見方を強調した。

 分析によると、レーザー兵器基地はこれらの基地の一つに設置されている。スライド式の屋根を持つ四つの主要建築物から成り、バット氏はネオジウムを使った強力な化学レーザーが収納されているとみている。

 米国防情報局(DIA)は2月に公表した報告で、「(中国は)衛星のセンサーを破壊するレーザーシステムを稼働させる限定的能力をすでに持っている可能性がある」と指摘、来年には地上配備のレーザー砲を稼働させると予測している。

 米国の偵察衛星が2006年8~9月に中国上空で、複数回にわたってレーザー照射を受ける事例が発生した。カー米国家偵察局(NRO)局長は当時、照射によって衛星の情報収集能力が損なわれることはなかったと指摘。低出力のレーザー光であったことから、衛星破壊兵器(ASAT)の照準機能の試験だったとみられている。

 米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」の中国アナリスト、イアン・イーストン氏は、米国はASAT攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)との見方を明らかにしている。

 米国は、軌道上の270基の軍事衛星のうちのほぼ半分を運用し、民間、商用、軍事転用可能の衛星は数百基に上る。

 イーストン氏は、「中国は、無数にある(低軌道上の)標的に対して使用する大規模な地上配備型ASATレーザー兵器を少なくとも1基、試験稼働させているとみられ、潜水艦搭載ASATミサイルを開発中で、最終的には静止軌道上の米国家安全保障に関わる衛星を攻撃できるようになる可能性がある」と指摘した。

 バット氏はさらに、新疆ウイグル自治区内の電磁パルス(EMP)兵器など新たな兵器システムの施設をも明らかにしている。

 EMPは、核爆発などが発生し、照射を受けると電子機器に障害が生じる。数千㌔先まで到達可能だ。バット氏によって、シリンダー状のEMP発生器とみられる施設が確認された。

 バット氏は「この施設は、(EMPに対する)中国軍の施設の強化方法、電子機器を使用する敵国の装備への影響を研究するための施設」と指摘した。

 中国の衛星追跡能力は近年、急速に向上しており、インドのニュースサイト「ザ・プリント」が3月、中国西部のチベット自治区ガリ地区にある追跡施設の存在を明らかにした。