戦争へのAI導入目指す中国

ビル・ガーツ氏

 

 中国人民解放軍(PLA)国防大学の軍事専門家が、将来のハイテク戦争は従来の破壊から、人工知能(AI)を使った高速で大規模な破壊作戦へと移行するとPLAは、考えていると強調、コンピューターで問題を解決するための方法や手順「アルゴリズム」で優位に立つものが、将来の戦争で勝利すると指摘した。PLAの公式新聞「PLAデイリー」が報じた。

 PLA国防大学の李明海氏は、「戦闘は、城を襲撃し、土地を奪取するための流血の戦いから、情報を駆使した精密殺害作戦、高度な諜報(ちょうほう)領域での戦いへと進化した」と指摘、AIは中国にとって重要な「戦勝メカニズム」になると強調している。

 李氏によると、中国は、戦闘での重点を「システムの衝突」から「アルゴリズムの競争」へとシフトさせることで戦争に勝つ計画を立てているという。

 同氏は、最終的にアルゴリズムで優位に立てば、短時間で正確に戦況を予測でき「戦闘でも優位」に立つと強調、これによって「戦闘が始まる前に敵を圧倒する」ことを目指している。

 また、大量のデータを利用することで、アルゴリズムを戦闘知能へと転換することが可能になる。さらに量子コンピューティングを用いることでAIの効果は飛躍的に高まり、PLAは紛争で「意思決定での優位性」を獲得できると李氏は分析している。

 PLAデイリーによると、シリアのロシア軍は2015年末の作戦で、無人戦闘車、無人航空機を使って過激派組織「イスラム国」(IS)を攻撃し、戦闘員70人を殺害した。ロボット主体の部隊を投入した初めてのケースだという。

 将来のAI戦争は、自律型の兵器・兵力と移行期の有人兵器との組み合わせになる。

 李氏によると、「AI戦で勝利すれば、警戒警報を出すタイミングが早まり、意思決定の時間が短縮され、作戦行動が拡大し、それによって先制措置、先制攻撃の効果は高まる」と同時に「敵兵力への『高い水準の奇襲』」を行うことが可能になる。

 同紙では、一つのシステムの例として、兵士の顔をスキャンできるカブトムシサイズのステルスドローンの使用が取り上げられている。「データ分析と判断によって、標的の頭を直接攻撃し、人の頭を貫くこともあり得る」と報じている。

 李氏は、分散した作戦で、大量のロボットを投入することで「核爆発をも凌駕(りょうが)する巨大な兵力を生み出せる可能性がある」と指摘した。