左傾化民主にシュルツ氏反旗
アメリカ保守論壇 M・ティーセン
大統領選出馬を検討
中間層が置き去りに
スターバックスのハワード・シュルツ前会長が、独立系候補として大統領選に出馬する可能性を示唆したことに民主党が怒っている。反トランプ勢力が分断され、トランプ氏の再選を後押しすることになることを恐れている。だが、それ以上に民主党が怒っていることがある。民主党は急進化していると非難したことだ。
民主党のウォーレン上院議員が最近提案した新富裕税をシュルツ氏は「ばかばかしい」と一蹴した。民主党のハリス上院議員が、個人医療保険は「なくすべきだ」と言うと、シュルツ氏は「米国らしくない」と反論した。民主党のオカシオコルテス下院議員が限界税率70%を提案すると、「米国で所得税率70が必要だとは思はない」とはねつけた。実際にシュルツ氏は、民主党の社会主義的政策をすべて非難、「全国民に無料メディケア(高齢者・障害者向け医療保険)を提供し、大学の学費を国費で賄い全国民に無料にするというが、ただのものなどない。絶対にない」と断言した。
民主党がいら立つのも無理はない。民主党は、共和党と議論するより、左寄りの政策を非難する独立派リベラル候補との対決に、今後の2年間を費やすことになるかもしれない。民主党がネオ社会主義に転換したことこそが、シュルツ氏が独立候補として出馬することを決めた理由だ。「もう(民主党に)協力しようとは思わない。米国人の多数派を代表しているとは思えないからだ」とシュルツ氏は述べている。
◇左寄りの政策を支持
シュルツ氏の主張は正しい。ピュー・リサーチ・センターの最新の調査で、民主党員の53%が、党にもっと穏健になり、オカシオコルテス氏の急進的な政策を取り入れないよう求めていることが明らかになった。民主党がトランプ大統領に勝つにはこれしかない。民主党は、オバマ前大統領に2度票を投じ、2016年にトランプ氏に転換した数百万人を取り戻したいはずだ。
ところが、票を取り戻すために中道に寄るのでなく、国による医療保険、国費でまかなう大学、国による雇用保証、「グリーン・ニュー・ディール」など左寄りの政策を支持している。その上、これらの政策には42兆5000億㌦もの費用がかかる。国の債務の約2倍だ。富裕層に課税すれば、すべてまかなえると主張している。そんなことは不可能であり、国民はそれを知っている。しかし、党内の過激分子の大部分は、これらを要求している。
これが、今の米国が抱えている問題だ。両党とも、勝つためには、中間層に歩み寄るより、岩盤支持層が飛び付きそうな政策を示し、他党に負けないくらい興奮させることだと考えている。その混乱の中で、数多くの理性的で、話せば分かる国民が置き去りにされ、受け入れがたい二つの政策のどちらかを選択することを迫られている。
新たな「忘れられた米国人」の誕生だ。シュルツ氏は、この「忘れられた米国人」のリーダーになろうとしている。報われず、今の急進的で、二極化した政治を嫌い、有能な中道派の指導者を望んでいる有権者はいるとシュルツ氏は考えている。
◇民主党に重大な脅威
シュルツ氏が出馬すれば、20年の大統領選で民主党にとって重大な脅威になる。だから民主党は、労働者のことなど何も分からない億万長者とシュルツ氏を非難する。だが、それは的外れだ。シュルツ氏は、経営者として、スターバックスの成功を従業員と共有できるよう、これまで誰もしてこなかったようなことをしてきた。バリスタに株式報酬を与え、アリゾナ州立大学の通信教育学位のための授業料を全額負担し、パートタイマーにも医療保険を提供した。シュルツ氏は、これらの実績と、穏健派リベラルとして財政責任を持つ政策で大統領選に勝てると踏んだ。
だが、恐らくそうはならない。独立系候補がかつて勝ったことがないのには理由がある。しかし、シュルツ氏は、誰よりも先に、1杯3㌦コーヒーへの潜在重要を見抜いた先見の明のある起業家だ。皆が見落としている中道派リーダーへの潜在需要を見抜いた先見の明のある政治起業家となる可能性はある。
結果はすぐに分かる。その時まで、財政的、政治的狂気の淵から民主党を呼び戻すことで、党を助ける。シュルツ氏が個人医療保険を廃止すべきだと主張するハリス氏を非難すると、ハリス陣営はこれを撤回し、ハリス氏は穏健な政策も支持してきたと訴えた。オカシオコルテス氏らネオ社会主義者らによって、民主党は左に傾斜した。その民主党を、20年大統領選での勝ち目がなくなると脅すことで、元に戻すことは可能だ。この点だけを考えれば、シュルツ氏の出馬は、国民にとって恩恵となる。
(2月1日)






