米政権、新START延長拒否か

ビル・ガーツ

 トランプ米政権高官は、ロシアが武器管理条約を順守していないことに懸念を表明、政権が2010年に締結された新戦略兵器削減条約(新START)の延長拒否に傾いていることを明らかにした。その一方で国防総省は、ロシアが中距離核戦力(INF)全廃条約に違反して開発を進める巡航ミサイルに対抗するため、新型の地上配備ミサイルの開発を進めている。

 トンプソン国務次官(軍備管理担当)は18日、上院外交委員会の公聴会で、「あらゆる選択肢が検討されている」と強調、新STARTを延長するかどうかは、2月にロシアが発表した新型戦略兵器の動向次第だと述べた。

 すでに、①新STARTからの離脱②延長のための査察・検証条項の再検討③限定的で簡素な合意―などの案を基に政権内で検討が進められているという。

 ロシアは、米国が新START違反を疑っていることに対して、偽情報を出したり、米国が条約に違反していると主張することで対抗してきた。

 デービッド・トラックテンバーグ政策担当国防次官代理も、「条約延長は、ロシアの武器管理の現状と照らし合わせたうえで、米国の国家安全保障に今後も資するものかどうかを見極めて判断すべきだ」と延長に慎重な見方を表明した。

 新STARTは、米露両国の核弾頭を1550発に制限するもので、達成期限の2月に削減目標が達成されたと発表されたばかりで、21年に失効する。

 米国は、今後30年間で1兆2000億ドル以上を投じて、老朽化した核兵器の近代化を行う。その中には、新型の地上配備ミサイル、ミサイル潜水艦、爆撃機の開発も含まれている。

 ロシアのプーチン大統領は2月、大型核弾頭が搭載可能な極超音速巡航ミサイル、長距離原子力ミサイル、水中ドローンなどの戦略兵器の開発を発表した。新STARTでは、新兵器の開発について通告することが義務付けられているが、トンプソン氏によると、ロシアはこれら兵器の開発について通告しておらず、条約に抵触しているという。共和党のルビオ上院議員は「これらの新型戦略兵器によって情勢が不安定化する可能性があり、機会があるたびにロシアに対して米国側の懸念を直接伝えなければならない」とロシアの条約違反に懸念を表明した。

 ロシアはINF全廃条約に抵触、新STARTにも抵触している可能性があることに加えて、英国で亡命ロシア人に化学兵器を使用し、化学兵器禁止条約にも違反。また、偵察機により相互の領域内の軍事活動、施設を監視し合うことを決めたオープンスカイズ条約も順守していない。