露、海底通信ケーブルを監視
米財務省は11日、ロシア連邦保安局(FSB)と協力して大西洋の海底通信ケーブルへの監視活動を行っているとしてロシアの水中設備企業ダイブテクノサービスに経済制裁を科すことを発表した。監視活動は将来の有事の際に、ケーブルを切断するなどして欧米の敵国を混乱させるためのものとみられている。
財務省の発表によると、ダイブテクノサービスは、2007年からFSBと協力、11年にはFSBから150万ドルを受け取り、海底ケーブル監視のための潜水艇を調達し、「大量のデータを送る海底通信ケーブルの監視」を行っていた。
米国防当局者は、ロシアが数年前から大西洋の海底ケーブルの調査を積極的に行ってきたと指摘。この当局者によると、毎年、米東海岸に進出していることで知られるロシアの情報収集艦ヤンタルが、海底ケーブルの監視を行っているとみられている。
ニュースサイト「ワシントン・フリー・ビーコン」が15年に報じたところによると、ヤンタルは深海偵察艇、ケーブル切断機器を備えており、海底ケーブルの本線と接続ポイントの位置の確認を行っている。
国防総省の情報当局者らは、ロシアの海底監視活動の主要目的は、国防総省情報ネットワーク(DoDIN)が使用しているネットワーク接続を把握することだと指摘した。
海底監視は、欧州の海域でも行われていることが分かっている。
情報・安全保障当局者らは、ロシアのこのような監視活動は、有事の際に、米国や欧州など敵国を混乱させるために海底通信ケーブルを切断することを視野に入れたものではないかとみて、警戒している。
米国では軍民ともにネットワーク化が進んでおり、海底ケーブルが切断されれば、軍だけでなく、民間にも大混乱を招くことになる。
安全保障アナリストによると、ケーブルは無数にあるため、特定の国のインターネット接続だけを切断することは難しいが、不可能ではないという。標的を絞って切断すれば、軍の補給を混乱させたり、ほかのケーブルを過負荷にしたりすることも可能だ。
ニュースサイト「ディフェンス・ワン」が最近報じたところによると、10年前に地中海で海底ケーブルが切断する事故が起き、米軍はイラクでの無人機作戦の縮小を余儀なくされたという。NATO潜水艦隊のアンドリュー・レノン司令官は昨年12月、ワシントン・ポスト紙に、「ロシアが海底ケーブル付近で活動している。このようなことはかつてなかったと思う。ロシアが、NATO加盟国の海底インフラに関心を持っていることは明らかだ」と語っている。