米資金がテロ組織に

イラン支援のヒズボラなど、前政権が懐柔策で支払い

ビル・ガーツ

 米政府は、オバマ政権時にイランに支払われた17億㌦の一部が、イランが支援するテロ組織の手に渡っていたことを突き止めた。情報筋によると、イランはこの資金を、レバノンを拠点とするテロ組織ヒズボラ、精鋭部隊「革命防衛隊」のために国外で情報・スパイ活動を行う「クッズ部隊」に提供したという。

 この資金は、1970年代のイランとの武器取引をめぐる合意の一環としてイランに支払われたものとされ、イランが支援するイエメンの反政府組織フーシ派にも渡った。

 オバマ大統領は2015年にイランと核合意を交わした。オバマ氏にとっては主要外交実績の一つだ。トランプ大統領は選挙戦中に核合意の破棄を約束していたが、1月に、当面は維持することを表明、一方で、オバマ政権時のイランへの支払いを批判し、テロ組織への資金提供を追跡することを強調していた。

 トランプ氏は1月12日、「核合意のおかげでイラン政府は巨額の資金を労することなく手に入れた。その額は1000億㌦以上に上り、そのうち18億㌦は現金だ」と指摘、「イラン国民の生活の改善には使われず、兵器、テロ、抑圧のために使われ、腐敗した政権幹部のポケットに入った」と核合意を強く非難した。

 トランプ氏は、「イランの弾道ミサイル開発計画、その他の非合法活動に関与した100近い個人と団体に制裁を科した」と強調、イエメンとシリアでの代理戦争でイランに対抗し、テロ組織への資金の流れを絶つことを明確にしている。

オバマ氏

オバマ前大統領(AFP=時事)

 オバマ政権が送った資金はまず、チャーター機でスイスに空輸され、ユーロ、スイス・フランなどに両替された。その後、イランの輸送機で16年1月、2月にイランに3回に分けて運ばれたという。総額17億㌦で、一部はイランが支援するテロ組織の秘密活動に使われた。

 オバマ政権は、イランへ資金を支払わなければ、1979年革命前のイランによる米製武器購入をめぐる仲裁裁判で敗北していたと主張し、正当化しようとした。しかし、オバマ氏の真の目的は、イラン政府を懐柔し、テロ支援をやめさせることだった。

 トランプ政権は、現在は核合意破棄への主張を緩和させているものの、オバマ政権当時からは百八十度方向転換し、イランのテロ活動に制裁を科している。マティス国防長官は最新の国防戦略で、国防の重点を、テロとの戦いから、国家との戦いに転換したことを表明。イランは「依然として暴力の種をまき、中東の安定に最大の脅威となっている」とイランを非難した。

 マティス氏はイランの活動について「周辺諸国と競合し、影響力を拡大し、不安化させ、その一方で、この地域でのヘゲモニーを奪い合い、テロを支援し、代理組織のネットワークを育て上げている。ミサイル開発計画はこれらの目的達成のためだ」と警告した。