イスラエル、イランの影響力拡大を警戒

ネタニヤフ氏、露大統領と会談
レバノンにミサイル工場建設か

 イランがレバノンで、精密誘導システムを開発している可能性が指摘される中、イスラエルのネタニヤフ首相は先月29日、モスクワでロシアのプーチン大統領と会談し、「イランはレバノンを大規模なミサイル基地にしようとしている」と警告した。(エルサレム・森田貴裕)

ロシア空軍基地

シリア北西部ラタキア近郊のロシア空軍基地=2016年5月(EPA=時事)

 会談では、シリアで軍事的影響力の拡大を続けるイランと、レバノンでの精密誘導ミサイル製造工場建設の問題に焦点が当てられたという。

 報道によると、ネタニヤフ氏は会談後、電話での記者会見で、イスラエルの記者団に「イランがシリアへの軍事的介入を継続するならば、断固阻止する」と語った。さらに、レバノンで精密誘導ミサイル工場の建設が進行中であり「イスラエルにとって深刻な脅威であり、容認できない」と強調した。ネタニヤフ氏によると、ロシア側はこのような脅威にさらされているイスラエルの立場を完全に理解しているという。

 イスラエルの極右政党「わが家イスラエル」党首であるリーベルマン国防相は31日、「イスラエルは、イランのミサイル計画がどこに位置し、誰がその設立に関与しているのかも知っている」「ミサイル生産を抑えるためにあらゆる手段を講じる」と述べた。

 ネタニヤフ氏は帰国後の閣僚会議で、「イスラエルは、中東での急進的なイスラム過激派を阻む要である。…国を守るためにあらゆる手段を講じる」と述べた。

 イスラエルのダノン国連大使は先月、国連安全保障理事会の会合で、イランがシリア全土を世界最大の軍事基地に変えようとしていると非難した。

 現在、シリアでイランの統制下にある戦闘員は8万2000人に上り、この中にはイランの精鋭部隊、革命防衛隊の3000人に加え、イラン系イスラム教シーア派組織ヒズボラの9000人、イラクやアフガニスタン、パキスタンなど中東全域から集められたシーア派民兵1万人、さらに、シリアの戦闘員6万人が含まれているという。

 また、ダノン氏は、国連加盟国に「イランが世界的なテロ組織に資金を供給し続け、同国の軍備増強や軍の駐留を国外に拡大することを容認しないよう」要請した。

 イスラエルはこれまで、シリア内戦の主要な仲介国である米国とロシアとの間で、イラン革命防衛隊や、シリア政権軍を支援するイラン統制下にあるシーア派民兵組織、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなど、イスラエルと敵対関係にあるテロ組織をイスラエル国境から遠ざけるよう交渉してきた。

 イスラエルは昨年から、レバノンやシリアで武器製造施設を建設し、シリアのイスラエル国境付近に軍を駐留させているイランを強く警戒している。また、シリアから最新兵器がヒスボラの手に渡ることを恐れ、レバノン行きの武器輸送部隊や武器倉庫などを爆撃している。

 アサド政権の最も強力な同盟国であるロシアは、これまでシリアで大きな軍事的存在感を示していたにもかかわらず、シリアでのイスラエルの空爆について表面上は黙認してきた。

 イスラエル、ロシア両国は、イスラエル軍と、シリアに駐留するロシア軍が、シリア空域での偶発的衝突を回避するため、定期的に協議している。