治安悪化のとばっちり


地球だより

 エジプトで、「車を運転している」と言うと、驚く日本人が多い。当然の反応だろう。本当にこのまま続けていいのかなと考えさせられることにも正直出くわす。

 2010年までのムバラク政権時代は、観光業も盛んだったことから、経済が好調で、新たな道路や高速道路が増えて社会全体が上向きに動いていることが実感できたものだ。しかし、11年初頭にエジプトを含む中東諸国に「アラブの春」が浸透し始めた頃から、治安悪化が始まり、観光業を直撃、経済が後退した。電力供給が急減して、道路脇の街灯から光が消えるようになった。

 現在は、高速道路上の明るさが十分でない上に、センターラインの白さが、見えないぐらいに汚れ、薄くなり、ひやひやすることが多くなっている。昼なら何とか見えても夜はお手上げだ。

 路面の穴も増えてきた。それを避けようと運転が不安定になる。一時停止の慣習も標識もなく、横道から飛び出してくる車にもひやひやさせられる。

 さらに大きな問題は、走行中の車を徐行させるために路上に大きな盛り上がりが作られていることだ。気付けばスピードを落とせるのだが、白線や照明灯もないため、そのまま乗り上げ車体を傷めることになる。

 隣国イスラエルで運転した時は、事故を起こさせないための工夫が感じられたものだが、治安・経済悪化のとばっちりは、交通事情にも及んでいる。

(S)