極秘無人宇宙往還機Ⅹ37Bが帰還

ビル・ガーツ

開発目的めぐり憶測

 宇宙に滞在していた米空軍の無人宇宙往還機X37Bが7日、これまでで最長718日間の飛行を終えて帰還した。X37Bはスペースシャトル型で全幅8・7㍍、フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センターに着陸する際、周辺数㌔内で、超音速飛行時に発生するソニックブームが聞こえたという。

 空軍は帰還に合わせて、X37Bの開発の目的について「再利用可能なスペースプレーン技術のリスク低減、実験、運用コンセプトの確立のために行っている」と説明したが、詳細は明らかにされていない。

 軍事利用の可能性を示す唯一の手掛かりは、計画を管理しているのが、戦闘支援システムと兵器の調達を任務とする空軍即応能力局である点だ。

 無人スペースプレーンは、空軍が宇宙状況認識と呼ぶ、衛星破壊兵器や宇宙ごみ(デブリ)など宇宙空間での脅威に関する情報収集で中心的役割を果たすことになる。

X37B

7日、フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センターに着陸した無人宇宙往還機X37B=UPI

 中国とロシアが開発を進める衛星破壊兵器を阻止するための対衛星戦争など、戦略的な任務にも使用可能だ。宇宙戦の専門家である戦略軍のハイテン司令官は、X37計画を強く支持しており、開発を注視しているとみられている。

 ハイテン氏は昨年9月、上院軍事委員会での証言で「国防総省は、中露からの脅威への対応策の策定を意欲的に進めている。早く対応することが重要だと思う」と、中露が宇宙戦能力を急速に高めていることを指摘、対応の必要性を強調していた。

 ハイテン氏の懸念は、通信、航行のために使用される米国の人工衛星への脅威が高まっていることを示す情報が最近、出されたことを受けたものとみられている。

 シンクタンク「スペース・ロー・ポリシー・ソリューション」のマイケル・リスナー所長は、「X37計画は極秘とされている部分が多く、大きな関心を呼んでいる。宇宙兵器の試験をしたり、衛星破壊兵器として使用するための実験、衛星監視能力の実験などが行われているとの見方もある」と語り、エンジン、センサー、材料のための技術の試験台など、さまざまな利用法が考えられると指摘した。

 また、「X37の主要任務は、中国軍の情報機関にその目的を推測させ、あらゆる可能性に対処させることが目的である可能性もある」と、中国軍を欺くための欺瞞という見方もあることを明らかにした。