中国軍 「グアム・キラー」を増強

空母など艦艇攻撃も可能に

ビル・ガーツ

 

 「グアム・キラー」として知られる中国の中距離弾道ミサイル「東風26」の配備が急速に拡大していることが、米空軍の国家航空宇宙情報センター(NASIC)の報告から明らかになった。

 NASICの報告書「弾道ミサイルと巡航ミサイルの脅威」によると、東風26の路上移動式発射台が2019年末の200基から7カ月足らずで350基に増加した。発射後短時間で再装填可能なことから、配備されているミサイルの数はさらに多いとみられている。

 報告によると、東風26は核、通常どちらの弾頭も搭載可能で、移動式のため攻撃を受けにくい。また、核搭載・精密攻撃可能な初めてのミサイルと報告は指摘。「中国の弾道ミサイル開発は依然、世界で最も活発」であり、「短期間で低出力核弾頭を搭載できる可能性が非常に高い」と警告している。

 また、中国の軍事専門家らは、東風26のようなミサイルは「政治状況、戦況のコントロールに影響を及ぼす重要な要素であり、戦争の結果すら左右する」と考えていると指摘、中国が中距離ミサイルの強化を重視していることを明確にしている。

 東風26は射程約4000㌔、南太平洋の米海軍の拠点であるグアムに到達可能なことから、グアム・キラーと呼ばれている。海上移動型も開発が進められているとみられ、その精密誘導能力を生かせば、空母など海上の大型艦艇の攻撃も可能になるとみられている。

 国務省の報告によると、10年以降、中国の弾道ミサイルはほぼ3倍に増加、そのうちの6割が中・短距離ミサイルで、それ以外は新型の長距離ミサイルだという。NASICの報告は、中国が台湾の対岸に配備を進める短距離ミサイルについても触れており、国際評価戦略センター上級研究員リック・フィッシャー氏は、これらの短距離ミサイルは台湾だけでなく沖縄の米軍も攻撃可能との見方を示した。

 フィッシャー氏は短距離ミサイルの増強について「中国の(短距離弾道ミサイルの)大部分は、台湾だけでなく、沖縄にとっても脅威となり得る。これによって中国軍は、グアムや航行中の米空母などさらに遠方の標的を350発の中距離ミサイルで攻撃する柔軟性が得られる」と説明した。

 また、原子力潜水艦「094型」には72発の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪2」が搭載されているとみられている。フィッシャー氏は「094型の改良型に複数弾頭の巨浪3が搭載されれば、中国の核弾頭の数は30年までに2倍、または3倍化、4倍化される可能性もあるとする米国の予想が現実味を帯びることになる」と、米本土への脅威が高まる可能性を指摘した。