中国 核弾頭製造施設を急拡大
米の衛星画像で明らかに
中国は、増強を進めるミサイル・爆撃機用の核弾頭を製造するための極秘計画の一環としてプルトニウム・ウラン工場を拡充させるなど、核戦力を急速に強化している。ワシントン・タイムズ紙が入手した米政府の4枚の衛星画像から明らかになった。

ビル・ガーツ氏
米紙ワシントン・タイムズ(WT)の国防担当記者として、これまでにスクープ記事を多数執筆。2019年11月まで米保守系ニュースサイト、ワシントン・フリー・ビーコンの上級エディター。著書に『Deceiving the Sky(空を欺く)-地球的覇権狙う共産中国、活動の内幕』(Encounter Books)、『誰がテポドン開発を許したか』(文藝春秋社刊)など 
画像は、北大西洋条約機構(NATO)同盟国への中国核戦力に関する現状報告に使用された資料の一部で、2010年以降、3カ所の施設が急速に拡大されていることが分かる。それによると、プルトニウム製造が行われている中国北西部、甘粛省の酒泉原子力複合施設はこの2年間だけで規模が2倍になり、過去1年以内に原子炉1基が追加された。
米当局者らは、酒泉での大規模な施設拡充は、国防総省が最近指摘したように、今後10年間で核弾頭の保有数を倍増させる計画の一環とみている。中国は200発以上の核弾頭を保有、複数弾頭ミサイルの増強を進めている。
ビリングスリー米大統領特使(軍縮担当)は「中国は何発の核兵器を持ち、何発を製造する計画なのかを明らかにしていない」とした上で、「中国がインフラを極秘に集中的に増強していることは画像から明らかだ。軍事力と核戦力で米国とロシアに並ぼうとしていることは疑いようがない」と指摘した。
別の画像からは、四川省綿陽の核兵器関連研究施設が拡充されていることが分かる。ここでは、「中国工程物理研究院(CAEP)」のもとで、核弾頭の製造、核兵器の研究、開発、試験が実施されている。
CAEPは、米国の核兵器の設計が行われているロスアラモス国立研究所と核弾頭の組み立てが実施されているテキサス州のパンテックス工場を合わせた施設に相当。軍民の核開発を主導する専門家集団だ。
また、南部の四川省楽山にある軍用原子炉施設はこの10年間で規模が20倍に増強されている。楽山では、核兵器関連物質と海軍向け原子炉が製造されており、過去にはウラン濃縮工場が置かれていた。
楽山の施設の拡充は、弾道ミサイル搭載攻撃型潜水艦の増強の一環とみられている。
米政府は、新疆ウイグル自治区ロプノールの核実験場で、大規模な掘削が行われていることを4月の報告で明らかにしており、ここで核実験が実施された可能性も指摘されている。
ビリングスリー氏によると、中国は弾道ミサイルの発射実験を頻々に行っている。19年には225回実施しており、これは「中国を除く世界全体を合わせたよりも多い」という。今年は10月までに180回の試射が行われた。
米戦略軍のチャールズ・リチャード司令官は9月、中国の核弾頭数は米露と比較すれば大幅に少ないが、核戦力の増強を弾頭数だけで測るべきでないと警告。「運搬手段、その能力、即応性など全体を見るべきだ。中国が開発を進めている能力を見ると、中国が表明している核先制不使用の方針とは相いれない」と、中国の核開発に警戒心をあらわにしている。





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