米空軍 中露の北極進出に警鐘

「必要なら戦う用意」

 米空軍はこのほど、報告書「北極戦略」を発表、ロシアと中国がこの地域で影響力を強める中、「自由で開かれた」北極地域を維持し、必要ならば敵国と戦う用意があると訴えた。

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ

 報告は、北極での中露の活動によって、安全保障上の緩衝地帯としての北極の役割が侵害されていると主張、その結果、北極を通じて「国土に脅威」が及ぶようになると警鐘を鳴らしている。

 米軍は、紛争の発生に備えて北半球でのミサイル防衛・早期警戒レーダーを強化しているが、とりわけアラスカ、カナダ、グリーンランドに重点を置いている。

 「C3ISR(指揮、統制、通信、情報、監視、偵察)」だけでなく、ミサイルに対する防衛と警戒の強化によって、北極での脅威をこれまで以上に把握しやすくなり、基地のネットワークによって「あらゆる領域で、戦闘に勝てる航空・宇宙戦力を投射」できるようになると報告は指摘している。

 ポンペオ国務長官は北極防衛への取り組みの一環として、デンマーク自治領のグリーンランドに領事館を新設することを発表したばかりだ。

 北極では今後、天然資源をめぐり、国際的な競争が展開されるとみられている。

 報告によると、北極の原油埋蔵量は900億バレル、天然ガスは世界の30%に達し、ハイテク製品に欠かせないレアメタル(希少金属)は約1兆㌦に相当するとみられている。

 中国は北極に領土、領海を持たないが、北極を自国の経済と安全保障にとって重要な地域とみている。

 「中国は2018年に、北極を経済圏構想『一帯一路』と関連付け、この地域のレアアース、炭化水素、漁業資源への戦略的野心を明確にした」と報告は強調した。

 一方のロシアは、ミサイルを配備するなど、地域内での軍事活動を強化している。

 報告は「ロシアは新たな北極構想の下で、北方への進出を目指して、飛行場などのインフラを再開、基地を新設し、防空網、ミサイル、早期警戒レーダーを整備している」と指摘、「(海域での海上交通を支配するために)国際法の下で認められた権限を越えた」活動をしているばかりか、「ロシア軍がこの地域での利益を守るために重要な役割を果たし、他の目的のために見せ掛けの防衛力を利用している」と非難した。