米軍、中露の極超音速兵器に対抗策

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ氏

 米国防総省の宇宙開発局(SDA)は、中国とロシアが配備しているような極超音速ミサイルを追跡可能な人工衛星群を設置する計画を発表した。5月11日に提案書の草案が公表されたことで明らかになったもので、新世代の極超音速ミサイルを追跡、撃墜するための米軍による取り組みを知る最初の手掛かりになる。

 SDAのサイトに掲載された通告は、敵国は米軍の衛星システムの脆弱(ぜいじゃく)性を悪用し、宇宙で米国の優位性を崩すことを狙っていると指摘、「さらに、これらの潜在敵国は、さまざまな領域で国家安全保障の脅威となる兵器を短期間で開発、誇示しており、米国の宇宙ベースの能力による対応はそれに追い付いていない」と、米国が極超音速兵器開発で中露に後れを取っていると警告している。

 SDAは昨年、設置されたばかりで、宇宙での脅威を発見し、宇宙戦争のための兵器や能力の開発で重要な役割を果たしている。重要な第一歩は、高度2000㌔以下の低軌道上にセンサーとデータ送信システムを設置することだ。

 8基の衛星からなる追跡システムが2022年までに配備され、「極超音速ミサイルなどの新型ミサイルを発見、警告、追跡し、標的とする」ことを目指すという。

 これらの衛星は「低軌道上の極超音速飛行体を検知し、処理するための十分な感度」を備えた赤外線センサーを装備することになる。

 このセンサーが、迎撃ミサイル、レーザーなどの兵器で極超音速ミサイルを撃ち落とすための鍵となるとみられている。

 昨年まで戦略軍司令官だったジョン・ハイテン統合参謀本部副議長は、宇宙関連ニュースサイト「スペースニュース」に「見えない相手から守ることはできない」と述べ、現在、高めの軌道に配備されている警戒衛星よりも低い軌道に新たな衛星を配備すべきだと訴えた。

 中露が配備する極超音速ミサイルは、高速で誘導可能なことから追跡が困難。現在の米国のミサイル防衛システムは、予測可能な非誘導型のミサイル、弾頭を追跡することを想定してつくられている。

 空軍は17日、無人宇宙船X37を打ち上げた。公式には、周回飛行テスト機とされているが、その行動は極秘とされ、アナリストらは宇宙戦争のために開発されたものとみている。

 レイモンド宇宙軍司令官は、「X37のチームは今後も、宇宙領域で米国が国家として必要としている効率的で機動力の高い、野心的な技術を実証していく」と、その重要性を強調している。

 X37の任務はこれで6回目。今回初めて、実験用のモジュールが外部に設置されたが、宇宙軍は活動の内容を明らかにしていない。