米、領空開放条約脱退へ ロシアによる違反を非難


 トランプ米政権は21日、相互の領空での偵察飛行を認める領空開放(オープンスカイズ)条約にロシアが違反しているとして脱退すると表明した。22日に締約国などに通告し、6カ月後に脱退手続きが完了する。

トランプ大統領(右)とプーチン大統領

2019年6月28日、大阪で首脳会談に臨むトランプ大統領(右)とロシアのプーチン大統領(AFP時事)

 条約は軍事活動の透明性向上を目的に冷戦終結後の1992年に締結され、米国、ロシアのほか、欧州の34カ国が加盟している。

 しかし、米国は、ロシアがバルト海沿岸の飛び地カリーニングラード上空に半径500キロの飛行制限空域を設けるなど、条約への違反を続けていると批判してきた。カリーニングラードには弾道ミサイルが配備され、欧州諸国にとって脅威となっている。

 一方、国防総省などは、ロシアは同条約を利用して、米国や欧州上空で、サイバー攻撃の対象となるインフラについて偵察飛行を行っていると警告していた。

 トランプ大統領は21日、ホワイトハウスで記者団に「ロシアが条約を遵守していない。だからわれわれも脱退する」と脱退の理由を説明。一方で「われわれは新たな合意を結ぶか、合意を元通りにするため何かをする可能性は非常に高い」と述べ、今後のロシアとの交渉にも意欲を示した。

 ポンぺオ国務長官は声明で、ロシアが条約を完全に順守すれば離脱の決定を再考するとしつつも、「ロシアは条約を信頼醸成のための道具としてではなく、脅迫の武器として用いた」と非難した。

(ワシントン 山崎洋介)