憲法記念日ネット集会 全国発信吹聴する「赤旗」
より多い改憲派アクセス
今年の憲法記念日は改憲派、護憲派とも、新型コロナウイルスが感染拡大する中で「密にならないように」集会が見送られた。代わりにインターネットが利用されることになったが、外出自粛のコロナ事態は政治運動においてもテレワークによるネット化を後押ししそうだ。
共産党機関紙「しんぶん赤旗」(5・4)は、1面に「コロナに乗じた改憲許さない/ネットで憲法集会 全国に発信」の見出しで「許すな!安倍改憲発議!平和と命と人権を!5・3憲法集会2020」(5・3憲法集会実行委員会主催)を扱った。
この集会は、戦後を通じて自民党に反対する各党による護憲運動の中央イベントだが、「国会前で市民らによるスピーチをインターネットで配信する形」で行われた。
国会前でスピーチしたのは、総がかり行動実行委員会共同代表・高田健氏、早稲田大学名誉教授・浅倉むつ子氏、元国際基督教大学教授・稲正樹氏、ジャーナリスト・堀潤氏、総がかり行動実行委員会共同代表・小田川義和氏ら。
主催者は3日にユーチューブでライブ配信しており、その後21日までのアクセス数は1万5000あまりだ。アクセス数はそのまま個々人の数を意味しないが、目安にはなろう。
昨年は東京臨海広域防災公園で開催され、同紙(昨年5・4)は「東京で憲法集会 6万5000人/市民と野党の共闘広げ/4野党党首らそろう」などの見出しで、「過去最高となる6万5000人(主催者発表)が参加」したと、規模、野党共闘とも大きくアピールする報道をしていた。
今回は緊急事態宣言発令の下、野党各党の代表が国会前に姿を現すこともなく、共闘色のない紙面となった。「共産党、立憲民主党、国民民主党、社民党からメッセージが寄せられ」たと同紙は書くのみで、他野党のメッセージは掲載せず志位和夫委員長のものだけを載せた。
また、4日付同紙4面には「#憲法記念日うちでデモ」の記事が載り、「3日、コロナ禍のもと、個人、団体によるツイッターデモなどSNSを使った発信が全国各地で拡散」したと報じている。個人で紙に書いたアピールを掲げた写真や動画、小グループでプラカードを掲げるなどスタンディングアピールをツイッターや動画サイトに投稿するなど、ネット政治運動のノウハウの蓄積がうかがえる。
同紙1面には共産党本部の「情報システム分野勤務職員募集」の若い党員を対象とした求人広告が載り、同党はさらにネット戦略を強化する構えだ。
自民党機関紙「自由民主」は政府与党として目下のコロナ対策が毎号の1面を占めているが、運動方針で憲法改正の国民運動を掲げており、党憲法推進本部の有識者ヒアリングの記事を会合ごとに掲載。また、党青年局が、選挙権年齢の18歳への引き下げを受けて発行している漫画パンフ「18歳選挙 国に届け」最新版を「憲法改正と台湾の2本立て」にし、党サイト特設ページで公開したことなどを紹介した(同紙4・14)。また、5月12・19日付で、安倍晋三首相が改憲派のネット集会に自衛隊の存在を憲法に位置付ける必要などを訴えたメッセージを寄せたことを扱った。
この改憲派ネット集会は「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が主催した「5・3憲法フォーラム/憲法は国民の命と生活を守れるのか!―新型肺炎と中東危機」で、こちらも3日にユーチューブでライブ配信した。その後のアクセス数は3万回以上(21日)で護憲派より多い。
今後、政治運動がどう変容するかは、時間を待たねばならないだろう。
編集委員 窪田 伸雄