一律給付で公明党紙誌 佐藤優氏の評価を強調
説明責任など政府に注文
緊急事態宣言が発せられた新型コロナウイルス感染対策で、公明党の山口那津男代表が安倍晋三首相に10万円一律給付を「直訴」し、減収世帯に30万円給付という当初の政府方針を変更させた実績を同党機関紙誌はアピールしている。
目を引くのは公明新聞(5・6)1面に「私はこう見る」と銘打って作家の佐藤優氏を登場させ、もらえるもらえないという「社会の分断をつくらない方向に導いた」と一律給付の意義を語らせたことだ。
佐藤氏は、「一部報道にあるように、首相が選挙協力に配慮し、公明党の主張をのんだという皮相的な見方をすべきではない。…公明党を通じた大衆と民衆の力が首相を動かしたのだ」と述べるなど、同党を絶賛した。自民党主導でまとめた当初案を一変させたのだから、識者の支持を強調したいところだろう。
同時に、佐藤氏の手放しの評価で政府の対応に注文を付けたとも解される。海外ではコロナ対策で政権支持率上昇の例もあるが、安倍政権は支持を減らした。もどかしいとみたのか、機関誌「公明」6月号に「緊急事態に求められる政府の説明責任とは」(東京大学大学院准教授・関屋直也氏)と題する論文が載った。
ここで関屋氏は、「政策者側は打ち出す感染症抑止策について、どのような根拠があるのか/ないのか、そして何を目的としているのかについて、丁寧に透明性と公開性を持って説明していく」ことが「クライシス・コミュニケーションの要諦である」と指摘。
専門家の「感染症に関する『サイエンス』の説明は行われ、周知は進んでいる」が、PCR検査を例に首相がたびたび検査能力増強に言及しながら実際はなかなか受けられないなど、「治療体制、検査体制の問題について説明が不足している」として課題ありとする。
特に日本での最悪のシナリオ・死者40万人以上などを西浦博北海道大学大学院教授が説明したことについて、「海外では、最悪の見通しについては、大統領や首相など首脳が語るのが普通である」と苦言を呈した。非常時は悪い情報でも説明が支持率を左右するというわけだ。
編集委員 窪田 伸雄