選挙にコロナ影響「自由民主」 補選勝利も霞んだ都知事選

「赤旗」は山本氏発言を否定

 新型コロナウイルス感染拡大で、政党の存在を左右する選挙さえ各党メディアで二の次の扱いになった。自民党の機関紙「自由民主」(週刊)の1面は、2月末以来、新型コロナ対策で埋まっている。

 この間、4月26日に衆院静岡4区補欠選挙があった。補選も国政選挙であり平時なら1面で扱われていたが、候補者への公認証交付、告示とも3面扱い。当選には「過去に例のない選挙戦 深澤氏が大差を付けて勝利」と威勢のいい見出しながら、最終面の8面掲載だった(5・5)。

 過去に例のないというのは、新型コロナ感染で「候補者の活動が大きく制限され」、「個人演説会や集会といった人を集める運動を一切行わず」、「地域住民の安全に配慮した選挙活動を徹底した」ことだ。同党が「新型コロナウイルスとの戦い」と位置付けた選挙は、運動にも当てはまった。

 勝敗は次点の野党統一候補・田中健氏の3万8566票に対し6万6881票と深澤陽一氏の圧勝だが、「二階俊博幹事長は『難しい選挙戦を戦い抜き、勝利した』」と労(ねぎら)ったという。

選挙にコロナ影響「自由民主」 補選勝利も霞んだ都知事選

東京都知事選候補者の演説を聞く有権者らに新型コロナウイルスの感染対策を呼び掛けるボード=18日午前、東京・JR新宿駅前(時事)

 一方、7月には知事選が東京都(5日投票)と鹿児島県(12日投票)で行われる。前回、自民党が負けた選挙だが、コロナ対策に追われて雪辱への余力はなかったようだ。鹿児島県知事選には野党統一候補だった三反園(みたぞの)訓(さとし)知事を今回は「推薦を決定」と載せた(5・5)。小池百合子知事が2期目に挑む都知事選について同紙に言及はない。

 同党は候補を擁立せず自主投票を決めたが、小池氏との接点は同紙にもうかがえる。6月16日付最終面の8面「Weekly Jimin」という写真広報に、「新型コロナ対策で都知事と会談」の見出しで3日に自民党本部で行われた二階氏と小池氏との会談、「女性の活躍さらに推進へ 党本部と都の連携を強化」という前向きな見出しで同日、党女性政策推進室が小池氏と意見交換した2枚の写真を載せた。

 ただ、同紙「東京都版」になると小池氏に対決的だ。都議会自民党幹事長の鈴木章浩氏の談話「第一定例都議会を終えて」の見出しは、「無責任な『築地まちづくり方針』/小池知事ようやく『見直し』決断」というもの(4・21、28)。3月24日の都議会における小池氏答弁で築地再開発方針の見直しを表明したことに対するものだが、前回都知事選に次ぐ都議選で惨敗したしこりが残る。

 一方、都知事選で元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏を支援する立憲民主、共産、社民、市民連合などに波乱を起こしたのが、れいわ新選組の山本太郎代表だ。出馬会見で山本氏は、次期衆院選で消費税5%への税率引き下げを野党の統一政策とする話し合いを各党としてきたと述べた。これに共産党の小池晃書記局長が、「日本共産党としてはこのような“話し合い”には一切関わっていない」と否定したことを同党機関紙「しんぶん赤旗」(6・16)が報じた。

 しかし、昨年参院選のすぐ後、志位和夫委員長が「野党連合政権に向けた話し合い開始のための党首会談開催についての申し込み」を各野党にした際、最初に応じた山本氏と同9月12日に会談し、消費税廃止に向けた道筋を協議したことを同紙も「野党連合政権での協力合意」の見出しで伝えている(昨年9・13)。

 山本氏にとっては共産党と「話し合い」をしたのだろう。1月の京都市長選では自公の推す現職を立憲、国民民主、社民も推薦。共産党推薦候補に野党で味方したのはれいわ新選組だけで、山本氏は現地入りして応援した。都知事選での野党分裂の遺恨も深そうだ。

編集委員 窪田 伸雄