中国が「米CIA陰謀説」拡散、ウイルス発生源で偽情報

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ氏

 中国国営メディアは、新型コロナウイルスの発生源は米国だとする偽情報の拡散を強化しており、米中央情報局(CIA)が関わっているとする情報が中国国内ばかりかアジアに拡散している。

 新型コロナウイルスの発生源はいまだ特定されておらず、自然発生したウイルスが動物から人に感染したとする説や、生物兵器説などさまざまな説が流れている。

 ところが、中国政府は非難の矛先を国外に向けようと巧みなプロパガンダを行っていると、アナリストらは指摘する。

 中国の感染症の権威とされる鍾南山氏は2月27日、「感染が始まったのは中国だが、発生源は必ずしも中国とは限らない」と、国外が発生源である可能性を示唆した。

 中国共産党機関紙・人民日報は2月23日、日本メディアの報道を引き合いに出しながら、新型コロナウイルスは米国が発生源の可能性があると指摘。昨年10月に湖北省武漢で開催された軍人スポーツ選手の競技大会「ミリタリーワールドゲームズ」中に持ち込まれたのではないかとの見方を伝えた。この報道を契機に、CIAの生物兵器説が中国のインターネット交流サイト(SNS)で拡散していった。

 これについて米国の保守系非営利団体「独立した女性フォーラム」の研究員、クローディア・ロゼット氏は「中国のプロパガンダ機関が米国非難を展開、拡散させている」と指摘。中国共産党が従来通りの「思惑やうわさ」をばらまく手法で、新型コロナウイルスの責任を他国に転嫁しようとしているとの見方を明らかにした。

 一方で、発生源は当初言われていた武漢の海鮮市場ではない可能性が中国国内からも指摘されていることについては、中国の生物兵器計画が新型コロナウイルスの原因とする非難を封じ込める狙いがあるとみられている。

 中国科学院の論文掲載サイト「ChinaXiv」は、新型コロナウイルスは他の場所から持ち込まれ、その後急速に拡大したと見方を伝えた。英国の医学誌「ランセット」も中国政府系機関の研究をもとに、昨年12月1日の感染第1号の患者は海鮮市場に行っていなかったとして、感染源が海鮮市場との見方を否定している。

 ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなどリベラル系米大手メディアは、専門家らの指摘をもとに、新型コロナウイルスの発生源が中国の研究機関との見方を「陰謀論」として否定するが、発生源に関する情報は示していない。