韓国・日本に浸透するチュチェ思想

世日クラブ講演要旨

沖縄闘争やアイヌ新法に関与

ジャーナリスト 篠原常一郎氏

 ジャーナリストの篠原常一郎氏は、先月21日世界日報読者でつくる世日クラブ(会長=近藤譲良・近藤プランニングス代表取締役)で「韓国・日本に浸透するチュチェ思想」と題し講演。チュチェ思想が沖縄の反基地闘争やアイヌ新法にも影響を与えていることに警鐘を鳴らした。以下は講演の要旨。

拠点となった沖縄大
北朝鮮に忠誠誓う韓国要人も

 2015年当時、辺野古移設反対派の中に地元住民は一人しかいなかった。ほとんどが本土から来る人で、反対運動は全く地元に根付いていない。ある時、50人ほど集まっているうちの30人が韓国の済州島から来ていた。韓国の学者に聞くと、あれは韓国では主思派と呼ばれる、チュチェ思想を信奉する人たちだと言われた。民衆党、平和母の会などいろいろいて、全て韓国のチュチェ思想研究会がつくっている団体だ。

篠原常一郎氏

 しのはら・じょういちろう 1960年、東京都生まれ。立教大学文学部卒。公立小学校の非常勤教員を経て、日本共産党専従に。筆坂秀世参議院議員の公設秘書、民主党衆議院議員の政策秘書を務める。その傍ら軍事、安全保障問題の評論を執筆。著書に『ノモンハンの真実』(筆名・古是三春、光人社NF文庫)、『いますぐ読みたい日本共産党の謎』(徳間書店)など。

 沖縄では毎年、全国的なチュチェ思想研究会の集会をやっている。今年も1月に「チュチェ思想新春セミナー」を行った。日本では71年にチュチェ思想研究会が出来、飛躍するきっかけになったのが沖縄だ。

 大田元沖縄県知事のブレーンで沖縄大学学長だった佐久川政一は、実はチュチェ思想研究会全国連絡会の会長だ。沖縄大は今、教員約20人のうち10人以上がチュチェ思想研究会の役員で、大きな拠点になってしまった。民主党政権の終盤には、沖縄県教組の執行役員は全員チュチェ思想派で占められていた。琉球国際大学や琉球大学でもすごい数の教授がチュチェ思想派に名を連ねている。全駐労という米軍基地の労組の役員までチュチェ思想派が当選するようになり、米軍はこれを非常に不安がっている。

 今、彼らが何をしようとしているかというと、琉球先住民族論。これは中国が発明した理論だが、これに飛び付いたのがチュチェ思想派の教授たちだ。昨年の参院選で沖縄選挙区から当選した高良鉄美も琉球国際大の憲法学者で、琉球共和国憲法草案とか、琉球の自治を高めるためにどうするかとか、そういう論文を書いていた。彼の所属する沖縄社会大衆党は、執行部の大半がチュチェ思想派で占められている。

 チュチェ思想派が日本でもっと古くから手を付けていたのがアイヌ問題だ。北海道アイヌ協会トップ(副理事長)の阿部ユポが昨年、立ち上げに参加した「金正恩著作研究会」という団体がある。金正恩はチュチェ思想を世界の自主化のため指し示す偉大な指導者だから、この人の著作に学ばなければならないというもの。この研究会とチュチェ思想研究会に、北海道アイヌ協会副理事長として参加している。

 昨年成立したアイヌ新法の歴史観は、アイヌは明治以降日本人の侵略を受けて虐殺され、狩猟生活を禁止されて農耕と日本語の使用を強いられたというもの。これは全く事実ではない。アイヌ新法の法律案は三十数年前にチュチェ思想研究会の偽装団体である自主の会でつくられたもので、アイヌ新法と全く同じ内容だ。

 2007年、アイヌ民族を先住民として尊重するよう求める国連勧告が出ている。これにはからくりがある。外務省の大御所に武者小路公秀という人がいて、国連大学元副学長で、反差別国際運動日本委員会の理事長、国連の人権機関の顧問をやっている。日本全国に教え子の大学教授がいて、彼らが論文を書き、アイヌや沖縄の左派の代表を国連で証言させる。それを受けて人権機関で審議、決議させる。アイヌと琉球、両方とも決議が挙がっている。

 武者小路氏はチュチェ思想国際研究所の理事でもあり、北朝鮮に代わって国連の人権機関に働き掛けているのも日本のチュチェ思想派だ。北朝鮮こそ人権機関で提訴されるべきだが、彼らは北朝鮮が「歴史上唯一成功した社会主義国」だと言う。北朝鮮を米国から守り、その片棒を担ぐ日本を陥れるため、アイヌは先住民族だということにして分断し、お金も付けさせて自分たちの活動資金にしている。こういう運動はたくさんある。

 私はこれまで主に国内のチュチェ思想の問題を調べて訴えていたが、韓国の人々から働き掛けがあって、昨年重大な資料を入手することに成功した。何かというと、文在寅やソウル特別市長の朴元淳、そのほか政府高官や宗教指導者、企業経営者といった40の個人・団体が名を連ね、金正恩に忠誠を誓う手紙だ。これを韓国のテレビで暴露しようとしたが、テレビが政府側に弾圧されてできなかったという。

 私は韓国の学者の方に協力してもらうと同時に、第三国に暮らしている脱北者を3人ほど訪ねた。朝鮮労働党の大幹部だった人や、ロンドン公使だった太永浩さん、それから軍の元高官にも会ったが、みんな太鼓判を押してくれた。秘密党員たちは季節ごとに集会を行い決議する。単に忠誠を誓うだけではなく、最高指導者のために命懸けで何をするかが書いてある。恐ろしいことに、昨年3月に入手した時点で、文在寅政権はその8割を成し遂げていた。月刊誌「Hanada」10月号にその記事を掲載したら、反文在寅デモでそのコピーが撒(ま)かれて、しまいには大統領官邸前でみんなで朗読している。

 文在寅は学生時代に逮捕歴がある。韓国でチュチェ思想派が力を付けたきっかけは、金大中政権時の大々的な恩赦だった。与党・共に民主党の中には、この恩赦の際に牢獄から出て国会議員になった人が多い。

 チュチェ思想派は政府や軍隊にもどんどん入っていった。李明博、朴槿恵と保守政権が続いたが、必ず失脚するのは、チュチェ思想派がいろいろなことを暴露するからだ。金正恩への忠誠文には、朴槿恵を失脚させる方法まで書かれている。

 また韓国の主なマスコミは、チュチェ思想派の労働組合「民主労組」の傘下にある言論人労組が牛耳っている。反文在寅デモがソウルで毎週100万人規模で行われているが、テレビも新聞も全く報道しない。韓国のメディアが扱わないので日本でも報道されない。

 文在寅の演説を見るとチュチェ思想そのものだ。チュチェ思想の用語を含ませることで北にメッセージを送っている。歴代の韓国政府は脱北者の生活支援をしてきたが、文在寅はこれを打ち切った。抵抗する人たちには弾圧政策を取っていて、彼らは北に送還されるかもしれないという恐怖と闘っている。

 チュチェ思想派は拉致問題にも関わりがある。有本恵子さんの神戸市外大の恩師は家正治というチュチェ思想研究会の全国幹部で、高校で彼女を朝鮮問題研究会に勧誘した英語教師もチュチェ思想派だ。私は沖縄や北海道の人たちと「チュチェ思想から国民を守る会」という団体をつくった。拉致被害者を救う会とも協力して、チュチェ思想から目を背けず拉致問題をもう一度調査してほしいという陳情活動をやっている。皆さんにも、真実を知っていただきたい。