中国の空母戦力は未完成

初の国産空母「山東」
本格訓練の兆候見られず

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ氏

 中国は初の国産空母「山東」を昨年12月に就航させた。しかし、専門家らは、試験航海を繰り返しているものの、完全に運用可能な状態ではないとみている。

 中国は南シナ海の大部分の領有を主張、米艦艇とのにらみ合いが続いているが、中国国営メディアは、山東が南シナ海を拠点とすることを発表している。

 共産党機関紙・人民日報は、山東は南シナ海付近の海域に「戦略的に集中」し、海空での「支配の確立」を目指す計画の一翼を担うと報じた。

 米国と同盟国の艦艇が海域を航行していることについて、同紙は「このところ、複数の国の艦艇、航空機が南シナ海でいわゆる航行の自由作戦を実施し、問題を起こし、中国の主権を脅かしている」と主張。「外国の艦艇と直接、対峙(たいじ)することになりそうだ」と警告した。

 米太平洋艦隊で情報部門トップを務めたファネル元大佐は、中国が外国の技術に頼らず、「独自に建造」したという主張に強い疑念を持っている。

 中国は、サイバー攻撃やスパイを使って米国など外国の軍事技術を大量に盗んできた。

 2009年初めには中国人ハッカーがボーイングのネットワークに侵入し、空軍の最新鋭戦略輸送機C17に関する企業秘密を盗み出した。これによって、中国は40万ドル以下のサイバースパイ作戦の費用で、開発に400億ドルを要したとみられる技術を手に入れた。盗み出した技術は、中国の輸送機Y20に利用された。

 ファネル氏は、新空母の就役前に本格的な訓練、試験が実施された兆候が見当たらないと指摘している。空母は、数多く航空作戦を経験しないと、兵器を置いておくための「見せ物」にすぎない。

 ファネル氏は、汚れていない山東の甲板を指しながら、「米海軍の古い空母、コーラルシーやキティホークなどに20年ほど乗っていたが、航空機の飛行作戦を実施すれば、オイル、グリス、焼け焦げたゴムなどで至る所が汚れる」と指摘した。

 その上で「確かに新しい空母であり、工場から出てきたばかりのように見える。しかし、9回か10回も試験航行を行い、南シナ海も航行している。航空作戦も実施されたのではないかと思われ、もっと汚れているはずだ。タイヤ痕も見られない。普通はこうならない」と、山東の作戦実行能力に疑問を呈した。

 ファネル氏は「中国海軍が本当の空母海軍力を持つには、まだ大変な作業が必要」と思っていると述べた。

 空母の開発は、中国が海軍増強を進めていることを示すものであり、懸念すべき要因の一つだ。米海軍は、これら海軍力に対抗するための備えが必要になる。

 ファネル氏は「中国軍の空母戦力は未熟であり、米軍は中国空母が航行するときは常に情報収集、監視、偵察を積極的に行わなければならない。必要ならば撃沈する能力を完成させておくためだ」と、警戒の必要性を強調した。