レイモンド司令官が中国の宇宙進出を警告
脅威への対抗システム急務
米中は、宇宙空間の支配を目指して、宇宙戦能力の向上を急速に進めている。新設された宇宙軍のレイモンド司令官は戦略国際問題研究所(CSIS)で講演し、米国の人工衛星への攻撃の脅威は「広範囲に及び、大規模、複雑であり、強く懸念している」と、中国による宇宙進出に警告を発した。
米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は今月、年次報告書を公表。その中で、中国は、中国共産党が掲げる「航天夢(宇宙の夢)」の一環として、「シスルナー」と呼ばれる地球と月の間の空間の支配を目指していると強調した。
中国は月面上に、軍民共用の恒久的な基地を建設することを計画しており、報告は「中国が、宇宙でリードする国は、地上でも経済的、軍事的な支配的国家となり得ると考えていることは明らかだ」と指摘している。
レイモンド氏は6月の指名承認公聴会で、国防総省が、宇宙空間での攻撃的、防衛的軍事作戦を行う「対宇宙兵器」の開発に取り組んでいることを明らかにした。
「新旧の宇宙システムに防衛的手段・戦術を取り入れながら、新たな対宇宙システムの開発を進めている」と述べるとともに、宇宙戦での主要な脅威は中国とロシアであり、両国の兵器に対抗し、必要ならば宇宙空間で戦える攻撃・防衛的能力の開発が急務と訴えた。
宇宙戦能力の増強は、宇宙開発局(SDA)、ニューメキシコ州カートランド空軍基地の宇宙即応能力局など複数の部局で極秘で進められている。空軍では現在、秘匿性の高い無人宇宙往還機X37Bを運用しており、将来の宇宙戦兵器の一部になるとみられている。
1950年代以降、歴代の政権、議会は宇宙の「兵器化」を懸念し、宇宙兵器の開発を阻止、制限してきた。しかし、中露は近年、衛星破壊兵器、地上配備型衛星破壊レーザー兵器、周回軌道上の衛星破壊ロボットなど、宇宙戦に備えた兵器の開発、配備を進めている。
報告によると、中国軍は宇宙を、戦局を制するために必要な「コマンディングハイツ(管制高地)」と位置付けていると指摘、「中国は、宇宙を米国の軍事的、経済的に致命的な弱点とみており、(ミサイルなどを地上から直接打ち上げて攻撃する)直接上昇兵器、サイバー、電磁兵器、同一軌道を周回する兵器などの対宇宙兵器を配備し、ほぼすべての米国の宇宙資産を標的にしている」という。
レイモンド氏は、「宇宙からのあらゆる脅威に対抗するシステム」の必要性を強調。そのために「宇宙での優勢的な警戒・指揮・管制を通じて敵国の優位に立つ」ことを目指し、「新たな宇宙戦能力の開発」が進められていることを明らかにした。
国際評価戦略センター上級研究員のリック・フィッシャー氏は、「中国は、宇宙のほとんどの技術に関して米国に追い付こうとしている。中国共産党指導部は宇宙支配のために、軍事、政治、経済的戦略を一つにまとめることが可能であり、その点で、民主主義国家を凌駕(りょうが)する可能性が出てくる」と指摘、中国による宇宙空間支配を阻止することが重要だと訴えた。






