世界経済、財政で独英の協調実現するか

伊勢志摩サミットの焦点(中)

 減速懸念が強まる世界経済の持続的成長にどう対応するか――。主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の重要議題の一つである。

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G7財務相・中央銀行総裁会議の冒頭、あいさつする麻生太郎財務相(中央)。左は日銀の黒田東彦総裁=20日午後、仙台市太白区(代表撮影)

 その地ならしとして開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、財政政策や金融政策、構造改革といった政策手段を総動員するという「国際版3本の矢」(麻生太郎財務相)では一致した。

 しかし、減速懸念の要因である「世界経済は需要不足」(スティグリッツ米コロンビア大教授)という状況の中で肝心な財政出動は、ショイブレ独財務相が「構造改革が決定的に重要だ」と異論を唱え、やはり足並みがそろわなかった。

 やはり、とは安倍晋三首相が先の欧州訪問で各国首脳と会談した際も、メルケル独首相やキャメロン英首相とは同意が得られなかったからである。

 結局、財務相G7はタックスヘイブン(租税回避地)を利用した課税逃れ対策でG7が取り組みを主導することで合意したが、財政出動ではサミットでの首脳同士の議論に再度委ねられることになり、議長国として実行ある取り組みをどう進めていくか、本番開催までに重い宿題を残した。

 方向性として、一つはあくまで財政出動にこだわり、その必要性と独、英にしてもメリットがあることをどう認識してもらうか。もう一つは独、英の説得は諦めて総論の「国際版3本の矢」にとどめ、議長国として大規模な財政出動を表明して共鳴する首脳をいかに増やすか、である。

 既にフランスやイタリアは首相訪欧時に日本の主張に理解を示し、カナダは積極的である。日本の大規模財政出動は、先日の国内総生産(GDP)統計が示した景気の弱さからも政策的に矛盾しない。

 さらに来春予定の消費税増税の延期が表明されれば、国際通貨基金(IMF)が4月経済見通しで懸念した日本の「17年のマイナス成長」など先進国一の経済悪化を回避でき、内外両面で求められる経済成長に悪影響を及ぼさない。

 米国も財政出動は支持しているが、米国とは最近の円高に対する認識の相違が問題になっている。財務相G7での日米会談で、1㌦=105円台まで進んだ円高を「過度な変動や無秩序な動き」とする麻生財務相に対してルー米財務長官が反論するなど、日米間で見解の開きが浮き彫りになった。

 米国は「為替政策をめぐる緊密な協議が重要」と強調し、必要に応じて円売り介入を実施する構えの日本を牽制(けんせい)。ひいては結果的に円安誘導となる追加金融緩和策に対しても疑念を呼び起こしかねないからだ。

 もっとも、こうした日米間の為替をめぐる見解の相違は、G7が連携して世界経済の持続的成長に取り組むとする「世界経済イニシアチブ」を27日の首脳宣言に盛り込みたい安倍首相にとり、大同の前の小異程度か。それより、ルー長官が会見で「増税判断で景気が減速してはならない」と述べ、増税延期か大規模財政出動の必要性を示唆した点を重要視すべきということか。

(経済部・床井明男)