伊勢志摩サミット、「法の支配」強調の意義大きい
主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)は成果をまとめた首脳宣言を採択し、2日間にわたる協議が終了した。
先進7カ国(G7)が、強引な海洋進出を続ける中国を念頭に「法の支配」を強調した意義は大きい。
中国の海洋進出念頭に
8年ぶりにアジアで開かれた伊勢志摩サミットは世界経済、テロ対策、海洋安全保障、気候変動・エネルギー・環境など国際社会が直面する重要課題について議論された。
サミット開幕前夜には日米首脳会談が開かれ、予定を大幅に延長して1時間に及んだ。オバマ米大統領は沖縄県で元米兵の軍属が死体遺棄容疑で逮捕された事件に遺憾の意を表明し、「日米同盟は2カ国の安全保障について非常に重要な基盤だ」と語った。日米双方の国民から支持される同盟関係の必要性を認識した瞬間でもあった。
日本が最も重視した「海洋の安全保障」をめぐって、首脳宣言には中国を名指しはしないものの「東シナ海及び南シナ海における状況を懸念」と明記。安倍晋三首相が提唱してきた①国家が主張する時には国際法に基づいて行う②自国の主張を通すために力や威圧を用いない③紛争解決は司法手続きを含む平和的手段を追求すべきだ――との3原則を盛り込んだ。
中国は南シナ海では岩礁を埋め立てて軍事拠点化を進め、東シナ海では沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返している。このような強引な海洋進出は地域の平和と安定、航行の自由を脅かすものだ。首脳宣言採択に対し、中国は「強い不満と徹底反対」を表明した。だが、こうした主張が国際社会に受け入れられないことを認識する必要がある。
首脳宣言では、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の違法な併合も改めて非難した。「力による現状変更」を容認することがあってはならない。
北朝鮮に関しては、首脳宣言で今年1月の核実験とその後の弾道ミサイル発射を「最も強い表現で非難」するとした。拉致問題に言及したことも評価される。今後もG7を中心に国際的圧力を強めていかなければならない。
金正恩党委員長は今月の党大会で、北朝鮮が「責任ある核保有国」であることを強調し、核保有を既成事実化する構えを見せた。しかし核放棄をしない限り、制裁は解除されず、経済の立て直しは困難だろう。
テロ対策に関しては、首脳宣言とは別に「行動計画」をまとめた。G7関係当局間の情報共有強化、乗客予約記録(PNR)の活用などのほか、教育によって異なる文化や宗教の共存を促進することが盛り込まれた。テロの未然防止につなげる必要がある。
G7は結束して取り組め
世界経済に関しては、新たな危機に陥ることを回避するため全ての政策対応を行うとの決意を表明するとともに、各国状況に配慮しつつ、金融、財政および構造政策の「3本の矢」を個別または総合的に用いることを確認した。世界の重要課題にG7が結束して取り組むことが重要だ。