G7はパリ協定の早期発効へ結束示せ


 8年ぶりの日本開催となる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開幕した。世界経済やテロ対策、海洋安全保障などについて先進7カ国(G7)首脳が討議する。

 このほか地球温暖化対策も主要議題の一つであり、きょう議論の場が持たれる。2020年以降の温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の早期発効に向け、G7はサミットで結束を示す必要がある。

 サミットの主要議題

 この協定は昨年12月、パリ郊外で開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された。パリでは昨年11月、死者130人を出した同時テロが発生し、COP21は厳戒態勢の中で行われた。

 協定では各国に自主的な温室効果ガス削減目標の提出と5年ごとの見直しを義務付け、見直しの際にはより前向きな内容とするよう促した。また温暖化の深刻な影響を避けるため、産業革命前からの世界の平均気温の上昇幅を2度未満に抑える目標を掲げた。

 このまま温暖化が進めば、自然災害や農業被害の深刻化をもたらし、人類が被る損害は計り知れない。南太平洋の島嶼(とうしょ)国は海面上昇による国家存亡の危機に瀕(ひん)している。

 今年4月にはニューヨークの国連本部で、174カ国と欧州連合(EU)の代表が協定文書に署名した。協定は世界の温室ガス排出量の55%以上を占める少なくとも55カ国が批准書や承諾書を国連事務総長に寄託後、30日目に発効する。G7はサミットで足並みをそろえ、協定の早期発効を主導すべきだ。

 協定は今世紀後半に世界全体の温室ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げ、各国に対し、20年までに具体策を盛り込んだ長期戦略を提出するよう求めている。サミットに先立ち、富山市で開かれたG7環境相会合では、提出の前倒しを目指すことで合意した。対策が急務であることを踏まえれば当然だ。

 会合の共同声明には、各国で技術を共有し、食べ残しなどで捨てられている食品廃棄物の削減などに取り組む「富山物質循環フレームワーク」も盛り込まれた。サミットでも、資源の有効活用について議論される見通しだ。

 温暖化対策に関しては、特に温室ガスの二大排出国である米中両国の取り組みが問われる。先進国だけに削減義務を課した京都議定書に、中国は参加せず、米国は離脱した。

 パリ協定発効のためには、世界の温室ガス排出量の4割を占める米中の批准が重要となる。両国とも積極的に削減に努めるべきだ。

 日本政府は今月、30年までに温室ガス排出量を13年比で26%減らす目標を掲げた地球温暖化対策計画を閣議決定した。家庭部門で4割の排出削減を実現するため、発光ダイオード(LED)などの高効率照明や、断熱性能が高い新築の省エネ住宅の普及率を、それぞれ30年時点で100%にするとした。

 安倍首相は積極姿勢を

 サミットで議長を務める安倍晋三首相は、こうした積極姿勢をアピールし、議論を主導してほしい。