人口減少、「家庭の価値」重視の対策を


 厚生労働省が発表した2015年の人口動態統計によると、1人の女性が生涯に産む子供の数の推計値を示す合計特殊出生率が1・46と、9年ぶりにダウンした14年から0・04ポイント回復した。出生数も5年ぶりに増加へ転じた。

 一方で死亡数は増え続けており、今後も人口減少は続く見通しだ。人口減少は経済や財政、社会保障などに影響する。対策は国民的課題と言っていい。

 昨年の出生率は上昇

 出生率が1・45を超えるのは1994年以来、21年ぶり。出生数は14年から2117人増えて100万5656人となり、何とか100万人の大台を維持した。

 一方、死亡数は戦後最多の129万428人で、人口の自然減は28万4772人と過去最大を記録した。出産の中心となる15~49歳の女性人口は減っているため、今後も少子化や人口減少は続くとみられている。出生率が上昇しても、決して楽観はできない。

 安倍政権は20年代半ばまでに希望出生率1・8の達成を目指すとしている。今月末に閣議決定する予定の「ニッポン1億総活躍プラン」では、17年度末までに50万人分の保育の受け皿を整備し、待機児童の解消を目指すと明記した。女性が仕事と子育てを両立するための環境を整えるものだろう。

 もっとも、20~30代の働く女性の4割以上が専業主婦を希望しているとの調査もある。こうした女性に目配りし、専業主婦の出産や育児を後押しすることも、少子化対策につながるのではないか。

 また、女性は一般的に20代から30代半ばが出産適齢期で、それを過ぎると妊娠しにくくなったり、流産の恐れが強まったりする。安倍政権は13年、若い女性に結婚生活や妊娠・出産についての知識を普及するため「女性手帳」の配布を検討したが、「個人の選択に対する政府の介入だ」との批判を受け、導入を断念した。

 だが、こうした啓発活動は少子化対策の一環として重要だと言える。政府は何らかの代替策を考えるべきだろう。

 今回の統計によると、都道府県別で出生率が最も低かったのは東京(1・17)だった。若者の地方への移住や東京圏への転入超過抑制を進めていくことも求められる。地方の雇用創出や活性化など、安倍政権の地方創生が軌道に乗るかどうかが問われよう。

 何よりも、若者たちに結婚や育児の神聖さ、楽しさを伝えていくことが必要だ。少子化の背景には、戦後の日本社会に個人主義が蔓延(まんえん)し、伝統的家族観が軽んじられてきたことがある。こうした課題を克服しなければ人口減少を食い止めることはできない。

 絆を強めることを念頭に

 自民党は12年に発表した憲法改正草案で「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」(24条)としている。

 政府・与党は「家族の価値」を重視し、家族の絆を強めることを念頭に置いて、少子化対策を進めてもらいたい。