明年度のマイナス成長回避を

菊池 英博日本金融財政研究所長 菊池 英博

不可欠な大型補正予算

甘すぎる増税後の政府見通し

 2014年度予算は2月28日に衆議院で可決され、参議院の可決を待たずに予算が決まった。私は2月25日の衆議院予算委員会の公聴会に招請されて所見を述べたので、そのうちここでは14年度の経済見通しとその対応策について説明しよう。

 実質的に13年度予算は13年2月に成立した12年度補正予算(実質13兆円)と本予算(92・6兆円)の合計である105・6兆円であり、同じく14年度予算は14年2月に成立した13年度補正予算(5・5兆円)と本予算(95・8兆円)の合計である101・3兆円である。これだけを比較すると、実質的に14年度予算は前年度比でマイナス4・3兆円である。さらに経済成長に直結する公共投資で見ると、補正を含む13年度では前年度比で12・3兆円であるのに、同じく14年度では公共投資が前年度比でマイナス5・3兆円である。

 これだけ見ても、予算規模と公共投資がともに前年度に比べて減少しており、民間投資が期待できない現状では、デフレ効果が強まる。特に内閣府発表のGDP(国内総生産)の実質成長率を見ると、消費増税を決める決め手となった13年4~6月では前期比年プラス4・1%であったのに、直近の10~12月では同プラス0・7%まで低下している。この間の7~9月では前期比プラス0・9%のうち、公共投資だけでみた成長率がプラス1・1%である。つまり民間だけではマイナス0・2%であり、この傾向は現在まで継続しており、この流れで見ると、13年度はマイナス成長になる懸念がある。

 政府(内閣府)が発表した14年度の経済見通しは、消費税を3%増税した後の数字で実質GDP成長率をプラス1・4%(13年度比でマイナス1・2%)と予測し、経済成長の要因を見ると、輸出は13年度比プラス5・4%、民間設備投資は同プラス4・4%と極めて過大に見込んでおり、輸入は同プラス3・5%と見込んでいる。13年10~12月の速報改訂値では、輸入は同プラス3・5%と横這いだが、輸出は前期比(季節調整済み)プラス0・4%、設備投資は同プラス0・8%で、ともに低下している。

 特に民間投資は、13年1~3月まで四半期ベースで3期連続のマイナスであったが、4~6月期は住宅需要の駆け込みでプラスに転じたもので、消費税増税後はマイナスに転ずるであろう。現在の経済情勢を見ると、どう見ても14年度の政府の経済見通しは過大であり信用する人はいないであろう。

 私はすでにアベノミクスのユーフォリアは終わり、このままではデフレ解消は進まず、かえってデフレが進展するであろうと懸念している。大マスコミ(全国紙、NHK、民放等)や証券筋は大政翼賛会化しており、経済や国民生活にとってマイナスになるような情報は出さず、いつの間にか国民は不幸な状態に落とされるであろう。

 政府見通しは、消費税引き上げ後の経済成長であり、特に過大見込みと見られる輸出と設備投資が、13年7~9月並みかそれ以下に落ち込むと考えると、私の試算ではGDP成長率は実質名目ともにマイナスに落ち込むと予想される。

 住宅産業で見ると、政府見通しでは14年度は前年比マイナス3・2%となっている。リーマン・ショック以降の民間投資の減少から見ると、住宅投資は標準以上に回復しているので、14年度の住宅投資が12年度並みに落ち込むと考えると、13年度比でマイナス10%となり、これだけでGDPを0・2%ほど低下させよう。

 さらに、円ドル相場の動向にもよるが、エネルギー原料の輸入傾向は継続すると思われるので、政府見通しプラス3・5%は低すぎるであろう。貿易収支のマイナス幅が大きくなることは、経済成長のマイナス要因になる。国土強靭(きょうじん)化と減災防災の観点から、内需喚起政策を優先させて、内需中心の経済体質へ移行させる政策が急務である。

 安倍総理と麻生副総理の「15年継続したデフレを解消しよう」「成長こそ最大の財政再建」という名言を実現していくためには、明年度はデフレ解消のための大型で長期展望のある補正予算を組むことが不可欠であろう。

 その内訳としては①国土強靭化の加速のための政府投資、減災防災から地域開発、教育施設の拡充等、②金額は真水(政府の財政支出)で最低20兆円・事業規模最低25兆円が必要であろう。金額の内訳は「14年度予算で公共投資が前期比で5兆円少ないのでその減額補充」と「消費税増税によるGDPマイナス効果(私算でGDPの3%と見込む)で15兆円」であり、景気振興策として更なる関連事業の拡大が必要であろう。

 こうして、14年度を国土強靭化のための「5年100兆円・10年200兆円」という長期計画の初年度として位置づけて国民に宣言すれば、デフレ心理を払拭(ふっしょく)することができるし、経済が成長路線に乗るであろう。

(きくち・ひでひろ)