韓国との関係、文体制と市民を区別しよう

山田 寛

 

 ソウル市民の日本人対応が知りたくて、8月中旬UPF会議参加で訪韓した際、街を歩いた。日本語の市街地図を目立つ様に持ち、ザ日本人旅行者丸出しで地下鉄に乗り、日本大使館に近い安国駅周辺を歩き回った。

 地下鉄車内で立っていたら、「自分の横の席が空いた」とわざわざ声をかけてくれたおじさんがいた。街では4回道を尋ねたが皆丁寧に教えてくれた。ニッコリして日本語で説明した青年もいた。駐車場管理の小母(おば)さんは、英語のできる同僚を急いで呼んでくれた。

 約300人のデモ行進に出会った。「NO」のプラカードはなく、兵隊服姿で行進曲付き。保守派による反政権デモだった。

 もちろん短時間街をうろついて、「市民の大半は余り反日じゃない」とか「反政権デモが盛り上がる一方だ」とか断言はできない。8月下旬に日本人女性観光客が襲われる事件も起きた。前掲会議の中米人参加者は、空港からのタクシーの運転手にいきなり「日本は全く悪い奴(やつ)らだ」と息巻かれ、???だったと笑った。

 金曜の晩、ロッテワールドの食堂街で順番待ちの列が最長だったのは、日本の回転ずし店だった。だが市内のユニクロ店内はガラガラだった。街の表情は単純ではない。

 ソウル郊外のRさん(40)の事務所を訪ねた。大学での教え子だ。朝鮮系中国女性で真面目な留学生だったが、私生活で大苦難に遭遇し中退してしまった。その彼女が韓国に住み、3年前に日本、韓国、中国を結んで調理器具などを売買するミニ商社を立ち上げ、頑張っている。日本製品の韓国内での販売が伸び、社員も5人にふえた。

 そこへ日本品不買運動である。Rさんらは、商品の日本語の上に韓国語ラベルを貼りつける作業に追われていた。必死だった。

 日本の反韓ムードはどうかと聞かれて答えた。「嫌韓は確実に増えているが大反韓デモなどはない。先日ゴルフ選手権のテレビ中継を見たが、10人以上の韓国女子プロが日本選手と同様に拍手を受けていた。人気選手のイ・ボミには日本人以上の声援が飛んでいたよ」

 日本のスポーツ観客のマナーは大いに誇りたい。反韓・反中教育などしていないことが土台にあると思う。

 韓国は反日教育を続けているから、若者たちに反日感情が存在しても仕方ない。だが多くの一般市民からは、文在寅大統領の様なガチガチ反日は感じられない。政府、与党、親北団体、メディアによる反日圧力に逆らわないが、圧力が直接来ない所では反日にこだわらないのだろう。

 日本でも共産党や朝日新聞や「良心的知識人」らは、安倍政権の「対韓敵対行為」即時撤回を求める。だがそれでは未来志向の日韓関係など永遠に不可能だ。

 大統領から親北団体までの「文体制」の暴走には譲歩すべきではない。メディアは今、大統領最側近のスキャンダルを厳しく報じている。これを機に「反日」でも文体制べったり報道が減ってほしい。日本政府は韓国人記者団の理解増進のため、彼らとの会見などをもっと行ってはどうか。

 そして、一般市民(中小企業者も含め)にはできるだけ直撃被害を与えない様にしたい。例えば武藤正敏元駐韓大使なども言う様に、今後韓国への対応措置を強化する場合も韓国民へのビザ免除停止などはしない方がよかろう。

 韓国の航空各社は日韓路線の運休や減便を発表している。日本への韓国人観光客減少が理由というが、政権の思惑に沿っているのだろう。それでも来る観光客に、対女子プロ同様フェアな「おもてなし」をしよう。文体制と保守派や市民を区別して対応しよう。

(元嘉悦大学教授)