北ミサイル開発、迎撃態勢のさらなる強化を
防衛省は北朝鮮が5月から8月にかけて断続的に発射した一連の飛翔体を分析した結果を公表し、少なくとも2種類の新型短距離弾道ミサイルが含まれていると明らかにした。日本をはじめ北東アジアの安全保障にとって深刻な脅威であり、引き続き監視の目を光らせ、迎撃態勢をより一層強化しなければならない。
新型4種類に及ぶ恐れも
北朝鮮はこの期間、計9回にわたり18発の飛翔体発射実験を繰り返したが、このうち4回はロシア製の短距離弾道ミサイル「イスカンデル」と類似した新型だったという。また8月末に発射した2発については、これらと異なる固体燃料推進方式の新型ミサイルであることが判明。残りの発射については分析中としているが、最大で新型が4種類に及ぶ恐れが出ている。
イスカンデルは通常の弾道ミサイルよりはるかに低い高度で飛び、敵のミサイル防衛システムをかいくぐる可能性があるほか、最終段階ではおとりを撃ち出す機能も備えている。これと同じものを北朝鮮が開発した公算が大きく、ゆゆしき事態だ。
岩屋毅防衛相は分析結果について「北朝鮮がミサイル関連技術の能力向上を図っている」と指摘した。これらの開発には相当の年月が費やされていることを考えると、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長はトランプ米大統領との非核化交渉や韓国の文在寅大統領との首脳会談などで「融和」をアピールしながら、その裏で軍事力増強の手を緩めていなかったことが分かる。
新型ミサイルの射程はいずれも短距離で韓国攻撃を想定したものと言えるが、開発次第では日本を射程に収める中距離弾道ミサイルへの技術転用も可能とみられている。迎撃難易度が高いミサイルをどう防ぐのか対策が急がれる。
これと関連し、陸上配備型のミサイル防衛システム「イージス・アショア」の配備を滞りなく進める必要もある。政府は配備候補地である秋田県と山口県に対し、これまで以上に配備の必要性や安全性などで丁寧な説明を尽くさなければならない。
北朝鮮がこの時期にこうした新型ミサイルの開発能力を誇示した意図にも関心が集まる。米韓合同軍事演習に対する牽制(けんせい)もあっただろうが、何より新兵器開発に意欲的な正恩氏の思惑が反映されているのではないか。行き詰まりを見せている米朝非核化交渉との絡みでどのような戦略的判断が働いているのか見極めが必要だ。
戦後最悪とまで言われる日韓関係の間隙を突くように、北朝鮮が武力挑発をしている可能性もある。北朝鮮は中国やロシアと共に日韓連携の乱れを誘ってきたことを忘れてはなるまい。安保問題において日韓両国間に溝ができることは避けなければならない。
GSOMIA破棄撤回を
文政権は日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を発表した。
北朝鮮ミサイルに対する防衛では日米韓3カ国の協力が不可欠であるが、今回の発表は日米の韓国に対する不信と不満を増幅させており、極めて遺憾だ。破棄撤回を強く望む。