戦略軍司令官、対中有事で兵器不足懸念
ミサイル、海軍増強に脅威
米次期統合参謀本部副議長に指名されているハイテン戦略軍司令官(空軍大将)は、中国との間で軍事的緊張が高まる中、米軍内で、兵器不足が懸念されていると指摘、潜水艦やミサイルなど、東アジアでの戦力の増強の必要性を訴えた。
ハイテン氏は上院軍事委員会での証言のための準備書面で、中国のミサイルが米軍にとって最大の脅威だと強調した。ミサイル、水中戦での戦力が不足しており、米軍の東アジア地域への接近を阻止するために配備されている中国軍のミサイルなどに対抗する能力も不十分だという。米軍では、ミサイル、潜水艦などを擁するこれらの中国の戦力を「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦力と呼んでいる。
さらに、有事の際には、アジアの米軍への補給も困難になるという。
ハイテン氏は「中国との紛争が起きれば、補給は非常に困難になる」と指摘、軍幹部らは「戦略的配置によって、補給へのリスクを最小限にとどめることに意欲的に取り組んでいる」と述べた。
また、「中国軍ロケット軍は、中距離、準中距離弾道ミサイルの保有数を増やしており、韓国、日本、グアム、(伊豆・小笠原諸島からグアムを結ぶ)第2列島線内の海軍基地など地域内の米軍基地の脅威になっている」と指摘、「これらの多くは、空母、空軍基地など特定の標的を狙ったものであり、ロケット軍は、高度な戦闘準備態勢を維持している」と警告した。
中国軍の技術も「常に向上しており」、射程、残存性、精度、殺傷能力は高まっているとハイテン氏は指摘する。
中国からのこれらの脅威に対抗するための予算は近年、議会で認められるようになっているものの「弾道ミサイル、将来の極超音速兵器に対抗するには至っていない」とハイテン氏は危機感をあらわにした。
米軍は、初期段階のミサイル防衛に注力しており、迎撃能力と地上・宇宙配備センサーを強化している。
だがハイテン氏は、「中国は、弾道ミサイル、巡航ミサイルによる脅威から地上と海上の施設を守るという点に関して、米軍との能力差を短期間で埋めた」と中国の防衛能力強化が大幅に進んでいることを明らかにした。
また、中距離巡航ミサイル、低コストで高性能の巡航ミサイル防衛能力、極超音速兵器を開発するとともに、空と地上の輸送能力を高める必要があると指摘した。サイバー戦能力、空中給油能力、強固な通信・航法システムも必要だ。
中国海軍が進めている増強計画には、大規模な艦船建造計画が含まれている。米海軍は現在、兵力の約6割を太平洋地域に投入しているが、中国の艦艇数は2030年までに、米海軍よりもほぼ100隻多くなるとみられている。
中国の潜水艦建造に対抗するために、米海軍は、無人潜水艇の建造を進め、潜水艦の戦力増強にも取り組むという。
ハイテン氏は「非対称戦への対応能力に加えて、水中戦能力の向上を進めるロシアと中国に対抗するための機雷の開発を進めている」ことも明らかにした。