若者に照準の佐喜真陣営

’18沖縄県知事選ルポ (上)

自公 続々と議員投入 組織固め

 翁長雄志知事の死去に伴う沖縄県知事選挙(30日投開票)が終盤戦に突入している。政権与党などが推薦する前宜野湾市長の佐喜真淳(54)と、「オール沖縄」勢力が「翁長氏の後継者」として推す自由党前衆院議員の玉城デニー(58)との事実上の一騎打ちの構図で、各政党幹部が続々と沖縄入りするなど「総力戦」の様相を見せている。現地の動向をルポした。(敬称略)
 (沖縄県知事選取材班)

佐喜真淳氏

街頭アンケートに答えた支持者と記念撮影をする佐喜真淳氏=16日、那覇市(亀井玲那撮影)

 「思いのほか非常に厳しい選挙です。ぜひ勝たせてください」。県知事選と同日投開票の宜野湾市長選が告示された23日、前同市長の佐喜真淳=自民、公明、維新、希望推薦=は自身の後継候補の出陣式に現れた。大粒の汗を流しながら、有権者の元に駆け寄る。固い握手を交わし、県知事選への決死の思いを伝えた。

 この日の午後、沖縄県庁前では佐喜真を応援する青年有志が若者向けのイベントを主催した。「県知事候補の佐喜真淳さんの政策の中で、一番重要だと思うものにシールを貼ってください」と道行く人々に声を掛け、アンケートを実施。最も多くの票を集めたのは「地位協定の改定」で、「携帯電話利用料金の軽減」がそれに続いた。演説に立った佐喜真が「地位協定の改定、必ずやってみせます」と枯れた声を振り絞って叫ぶと、聴衆からは「佐喜真コール」が起こった。

 イベントでは、近年の選挙で主流戦術となっている期日前投票を盛んに呼び掛けた。県選挙管理委員会によると、期日前投票者数は4年前の県知事選から大幅に増加している。この日も、イベント後には開催場所から近い那覇市役所の投票所に長蛇の列ができた。

 同様のイベントは16日にも開かれ、いずれも自民党筆頭副幹事長の小泉進次郎が応援に駆け付けた。両日とも、日差しが強い時間帯にもかかわらず、身動きが取れないほどの人だかりができ、選対幹部からは「沖縄の選挙で過去最高の集まりだ」と驚きの声が上がる。

 沖縄基地負担軽減も担当する菅義偉官房長官は、告示前を合わせると、9月は3度沖縄入りした。20日には、前回知事選に出馬した衆院議員の下地幹郎(維新)が主催する決起大会に参加。沖縄滞在時間がわずか2時間という“弾丸ツアー”で、仲井真弘多元知事時代からできている経済の流れを佐喜真で加速させようと呼び掛けた。

 選挙戦の結果を左右するのは、大票田の那覇市の情勢だ。翁長雄志前知事の出身地で、「オール沖縄」の支持者や無党派層が多いのが特徴だ。そのため、佐喜真は那覇での遊説にかなりの時間を割く。また自民、公明などは、国会議員だけでなく都議、区議までも続々と送り込み、企業・団体訪問を通して組織固めを狙う。

 遊説やイベントで多くの人を集める一方で、県内での知名度は対立候補の玉城デニーに劣るのが現状だ。佐喜真陣営では、若者や無党派層への浸透を図り、選対内にインターネットやSNSを担当するIT部を設けた。責任者には若手スタッフを置いており、「知名度はまだまだだが、遊説の反応も徐々に良くなってきた」(選対幹部)という。

 玉城陣営が辺野古移設を最大の争点と位置付けていることから、移設の是非について明言を避ける佐喜真に批判の声もある。「県民の生活が良くなるかどうかは知事選の結果に懸かっている。基地反対なんて、無責任なきれい事にすぎない」。陣営の重鎮は批判を気に留めず、事務所の来訪者の対応に追われていた。