「生活向上」vs「反辺野古」で激突
公明「名護方式」の再現図る
「名護方式」で勝つ――。公明党沖縄県本部の金城勉代表は、決起大会のたびに、こう強調する。今年2月の名護市長選で自民、公明、維新が連携し、期日前投票を強化した結果、「奇跡の大逆転劇」(金城代表)を生んだことを指す。23日、県庁前で自民党の小泉進次郎・筆頭副幹事長が佐喜真の隣でマイクを握ると、「皆さん隣を見てください。那覇市役所があります。期日前投票に行ってください」と訴えた。
「名護方式」には、基地問題を争点から外すこともある。公明が佐喜真を推薦するに当たり締結した政策協定に「辺野古」の文言は入っていない。公明党沖縄県本部は普天間飛行場の名護市辺野古への移設には反対する考えが根強く、「辺野古を唯一の選択肢」とする党中央と意見が異なる背景がある。
一方で、多くの弁士が強調するのは沖縄振興だ。沖縄入りした菅義偉官房長官は、「佐喜真が知事になった場合、何に取り組みたいか」を問われると、「一番やりたいのは県民所得の向上、それと同時に、非正規雇用を正規雇用に転換したい」と語り、沖縄への思い入れの強さを印象付けた。
2015年の平均県民所得は216万円で、全国平均より107万円低い。佐喜真は「県民所得を300万円まで上げる」と街頭で積極的に訴えている。子供の貧困も非正規雇用率も全国一高く、大学進学率は全国最下位だ。若者を取り巻く環境は厳しい。自民選対幹部は、「若者にとって切実な問題がどこまで有権者に届くかが課題」と気を引き締める。
対する玉城は、「ウチナーグスーヨー、マキテェーナイビランドー!」(沖縄県民の皆さん、負けてたまるものか)と政府に対する反骨心を前面に出す。
保革を超えた「オール沖縄」という翁長路線を継承し、「辺野古移設反対」のワンイシューで集結しなければ勝てないという考えだ。
玉城は22日の那覇市の集会で、辺野古移設反対で県民の気持ちを一つにしようと呼び掛けた。
「沖縄の将来のためなら、沖縄の子供たちのためなら、思想信条を乗り越えて、右も左も関係ない。みんなで一つになって大きな力を発揮することができる。これが、翁長知事が残してくれた未来への確かな遺言だ。『イデオロギーよりアイデンティティー』という翁長知事の理念を全うして貫いていく」
「イデオロギーよりアイデンティティー」は翁長の常套(じょうとう)句で、玉城もそれを多用する。しかし、「アイデンティティー」という言葉に対して、疑念を抱く若者は多い。那覇市で開かれた佐喜真陣営の決起大会で青年を代表して登壇した会社役員、平良貴(41)は「『沖縄差別』という雰囲気をここ数年、ずっと耳にしてきたが強烈な違和感しか残らなかった。『アイデンティティー』は沖縄出身かどうかを差別する言葉だ。そんな沖縄は好きではない」と言い切った。
「生活向上」か「反辺野古」か。両候補の激戦は最終盤を迎えている。(敬称略)
(沖縄県知事選取材班)






