中国、有事に北朝鮮侵攻も

ビル・ガーツ

 南北首脳会談が実施されるなど融和ムードの韓国と北朝鮮だが、米国防総省が16日に公表した中国の軍事・安全保障分野の動向に関する年次報告書で、中国軍が朝鮮半島有事の際の北朝鮮への軍事介入計画を持っていることが初めて明らかになった。

米国防総省報告 北部戦区で訓練を強化

 報告は、「中国の優先事項は、朝鮮半島の安定を維持すること」と強調、半島有事に対応するために「北朝鮮への軍事介入」を行う可能性があると指摘している。

 中国は、1961年の北朝鮮との軍事同盟条約をもとに、侵攻を正当化する可能性もあるが、報告は、中国が同条約に基づいて北朝鮮の現体制を維持するために介入する意思があるかどうかは不明としている。

 中国が北朝鮮に侵攻する場合、管轄地域が北朝鮮国境に接する「北部戦区」の兵力が動員されることになる。

 北部戦区は3集団軍を持ち、17万人の兵員と海軍艦艇1隻、二つの空軍基地、1個航空支援師団、2個海軍航空師団、国境防衛を担う人民武装警察を擁する。有事には他の戦区からも援軍が投入され、「朝鮮半島での化学、生物、放射性物質、核に関する事象に対して、特殊装備の緊急対応部隊、緊急対応の訓練を受けた兵員を展開させる可能性がある」という。

 中国軍は2004年以来、国境防衛を中心に、北朝鮮国境近くでの合同作戦能力の強化を進めてきた。報告によると最近では「北部戦区で、軍民の統合、夜間作戦能力、山東半島から渤海を越えて遼寧半島に部隊を輸送する能力を向上させるための訓練」を行うなど、有事に備えた訓練を強化している。

 中国は2015年以降、北朝鮮への対応をめぐってロシアとの協力を進めており、地域安全保障をめぐる協議が8回にわたって行われている。

 中国専門家で国際評価戦略センターの上級研究員、リチャード・フィッシャー氏は、中国の北朝鮮侵攻計画について米国は、二つの点で対応しなければならないと主張。まず、「アジア駐留米軍に数百発の戦術核を配備して、中国が朝鮮半島での紛争に乗じて台湾に侵攻するのを阻止」し、「中国による北朝鮮のミサイル・核開発計画支援の全容を公表し、最低でも、16輪、18輪のミサイル搭載車両の供与などの支援を停止させる」べきだと訴えた。