統一選前半戦の「自由民主」 政策実現のスピード強調

地方対策は喫緊の課題

 安倍政権が「地方創生政策」を掲げて臨んだ統一地方選前半戦の投開票が12日に行われ、自民党は10知事選すべての推薦した現職が当選、政令指定都市市長選では推薦した4候補のうち札幌は民主党推薦候補に敗れたものの3勝1敗、41道府県議選で1153(前回1119)、17政令市議選で301(同222)と議席を増やした。

 この結果を同党機関紙「自由民主」4月21日号1面は、「真の地方創生実現へ/党基盤を強化」「来年の参院選に向け弾み」などの見出しで報じ、「党基盤がさらに強化されたことで、真の地方創生実現など、わが党は『政策実現政党』として、よりスピード感をもって課題解決に取り組んでいく」(リード)と決意を表明している。

 今回の統一地方選の位置づけについて、同紙4月7日号1面「統一地方選がスタート」の記事は、「衆参のねじれを解消したわが党にとって、今度の統一地方選は『政策実現政党』としての足場を完成させるための極めて重要な選挙」としている。

 実現する政策は「アベノミクスの成果を全国津々浦々まで波及させ、地方経済の好循環を実現する」ことや「地方創生の実現」で、これに「スピード感が求められている」と強調した。

 人口減少社会となり、現在のまま東京一極集中と地方の過疎化が進めば消滅する地方自治体が出てくる時代となった。地方対策は喫緊の課題であり、安倍内閣は地方創生担当相を新設して対策に乗り出したが、人口問題は効果が出るのに長い年月がかかる。既に遅きに失したきらいもあり「スピード」が必要との認識はもっともなことだ。

 アベノミクスの成果は円安株高だが、恩恵を受けているのは輸出産業や金融界、富裕層、次いで2年連続のベアを実現した企業の社員などだ。しかし、昨年4月の消費税増税からの個人消費の回復はまだ鈍く、第3の矢の成長戦略が軌道に乗り「全国津々浦々まで波及」するかは予断を許さない。

 その中で、同党が統一地方選でアピールしているのが地方創生政策における新交付金だ。同紙(4・3)の解説欄で「自治体の商品券発行」が取り上げられており、「国の『地域消費喚起・生活支援型』交付金によるプレミアム付き商品券発行が全国の自治体で始まりました」と、さまざまなアイデア商品券を紹介している。

 一例を挙げると、鳥取県が県内全域の旅館・ホテルで通用するプレミア率100%の宿泊券5000円(額面1万円)をコンビニエンスストアの専用端末で販売予定という。自治体が発案するものだが、国政および地方政治で与党が主導権を握って交付金を活用し、選挙で実績としてアピールする一石二鳥を狙う政治家本能も働くだろう。

 かつて自民党政権では、国の予算は公共事業を通してゼネコンから地方に流れたが、地方の名産や特性、ニーズを反映した商品券で消費を刺激するのは着想のいる試みである。統一地方選の結果を受けて国と地方が知恵を絞る政策の実現に本当にスピードがかかるか、これからが正念場だ。

解説室長 窪田 伸雄