「女性活躍」促す「公明」、「賃金」の差別撤廃を主張
OECD「最悪」と識者指摘
女性活躍担当相を含む女性閣僚5人を登用した第2次安倍改造内閣が発足した。安倍政権の女性重視に与野党の反応は異なるが、与党の公明党は機関誌「公明」10月号で評論家・金谷千慧子氏の「ウーマノミクスとアベノミクス 経済成長促す女性の『力』熟知し応援を」と題する論文を載せ、支持した。
金谷氏は日本の女性の雇用状況を男女差別と捉えている。「日本は差別の撤廃と女性の就業率向上に向かって諸外国から多くの成功例を取り入れ、ウーマノミクスの神髄を理解して、そのプロセスを加速することである」と結論するところ、安倍政権の女性重視を前向きに捉えている。
差別撤廃を訴えるのは賃金格差など雇用問題におけるもので、雇用の男女格差をなくした方が日本の経済成長を底上げするという主張だ。同論文は同誌特集「成長戦略成功の鍵」に寄せられたもので、アベノミクスを「女性の活躍で経済を活性化する」ウーマノミクスを採用して「女性の活用を要と位置づけ、三つの柱で経済成長を実現すると主張」する経済政策と見ており、巷間呼ばれる三つの矢(金融緩和、財政出動、成長戦略)に「女性」の存在を強調している。
従って、この場合に「女性」が存在感を発揮するのはアベノミクス第三の矢・成長戦略においてだ。そこに金谷氏は、「期待感がある。特に20~30歳代の女性には期待が大きい」と評価している。理由は「結婚・出産を機に約6割の女性が仕事を辞めてしまう」実情がわが国にあるからだ。
安倍政権の女性政策は「202030(にぃまるにぃまるさんまる)」と呼ばれ、2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする数値目標で端的に表現されている。他に同年までに25歳~44歳の女性就業率を73%にする――など複数の数値目標が閣議決定(13年6月)された。
金谷氏は、これらアベノミクスの女性政策の背景となった「二つのリポート」、ゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井氏による「ウーマノミクス」、国際通貨基金(IMF)リポート「女性が日本を救えるか」などから、女性の就業率を「男性並みの80%」にし、そのための格差是正など雇用環境を整備する方向を評価した。
また、女性の就業率68%は「経済協力開発機構(OECD)加盟国34カ国中24位」、「子どもを持つ女性の賃金差別が世界最悪の日本では女性賃金は男性賃金のわずか39%で、OECD加盟30カ国の平均78%の半分という異常な数字である」と述べ、OECDが「子どもを持つ女性には賃金ペナルティが存在する」と日本について言及していることを紹介した。
確かにこの状況は改善が必要だろう。法整備とともに大前提はやはりデフレ脱却だ。企業側もない袖は振れない。賃下げ圧力となったデフレ・スパイラルを好循環に逆転させながら、結婚・出産・子育て・仕事のバランスをとる施策が求められる。「女性活躍」は世紀の大仕事と言えそうだ。
解説室長 窪田 伸雄