沖縄県知事選、普天間の安全確実にする選択を


 2カ月後となった沖縄県知事選に、那覇市長の翁長雄志氏が正式に立候補を表明し、3選を目指す現職の仲井真弘多知事と元郵政民営化担当相の下地幹郎氏の3人で争うことになった。

明るい未来もテーマに

 最大の争点は、沖縄県宜野湾市に位置する米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸への移設問題だが、この問題が生じたそもそもの原点は、同飛行場周辺に密集して住む市民の危険性を除去するため日米両政府が移設をすることで合意したことにあった。したがって、選挙戦は原点に立ち戻り移設先の具体的かつ現実的な代替案で競うべきだ。

 自民党の推薦を受けた仲井真知事は昨年12月、辺野古沿岸部の埋め立てを承認し、その後同地域への移設を明確に表明。政府がすでにボーリング調査を行っている。この作業は着実に進められていく見通しだ。

 これについて、18年前に「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)で日本政府と最終合意した米国は「画期的な出来事」とし、承認は「日米が21世紀の安全保障のために複雑で難しい問題に対処できることを示した」(ヘーゲル国防長官)と評価している。日米同盟の一層の強化に向け前進したのである。

 ところが、翁長氏の主張には移設の原点が欠落している。10日の市議会本会議で辺野古への移設反対を明確にし仲井真氏との対立軸を鮮明にしたのだが、「今後100年置かれ続ける基地を絶対に造らせてはいけない」との反対論を述べただけ。普天間飛行場周辺住民の安全をどう確保するのか、移設するならどこを考えているのか。辺野古への移設に反対ならそれをどう阻止するのか。それらについて具体的な代替案を語っていない。これでは説得力がない。

 翁長氏は自民党県議、県連幹事長を経験してきたが、同氏の集会には共産党や社会大衆党、社民党などの支持者が参加し支持母体も左翼団体が主力となっている。

 「何でも反対」と革新勢力を批判してきた翁長氏が同様の移設反対論のみで戦うのは矛盾している。立候補者が一同に会してこのテーマで論戦することが県民には分かりやすいだろう。

 沖縄の明るい未来についても論争してもらいたい。安倍晋三首相は沖縄が「日本のフロントランナーとして21世紀の成長モデルとなり、日本経済活性化の牽引役となるよう」平成33年度まで、沖縄振興予算を毎年3000億円台確保することを約束した。その国家戦略は、仲井真氏の肝入りで20年先を見据えて考案した「沖縄21世紀ビジョン」にも連動したものだ。

 これに対し翁長氏は、この仲井真ビジョンに同調しただけで、自らの青写真は示していない。だが沖縄をどう変えたいのか、経済振興策をどう練るのか。そうした具体案を自らの口で語るべきである。

 政府も要望に応えよ

 菅義偉官房長官がきょう、沖縄基地負担軽減担当相を兼務した後、初めて沖縄を訪問する。

 県が求める普天間飛行場の「5年以内の運用停止」に対して知恵を出し、それに応えられるよう取り組むことが求められている。

(9月17日付社説)