政界、一寸先は闇
「虫の音に挟まれて行く山路かな」(風国)。夜道を歩いていると、虫の鳴き声が聞こえた。かすかな声だったので、秋を感じるまではいかなかったが、もうすぐという実感を得た。
動画投稿サイトのユーチューブを見ていると、都会から田舎へ拠点を移した人々の話で、自然が多いのはいいが、数多くの虫が家に入って来るので困ったというのがあった。確かに都会暮らしでは、虫といってもハエやカ、ゴキブリなどに限られてしまう。
田舎だと、昼は外からわが物顔にムカデや昆虫などが侵入してきて、夜中には電灯の明かりを目指して虫が飛んでくる。気流子の子供時代は、大きな音を立てて電灯や壁にぶつかるのはガやカブトムシ、コガネムシ、時にはセミやトンボ、チョウなどだった。
田舎の夜は静かなので、虫たちの羽音や衝突音がうるさかった。辺りは真っ暗になり、隣近所の明かりのほかには月や星の光があるだけ。闇が深かったことを覚えている。
文明の利器である電灯がなかった江戸時代は、全くの闇夜で恐ろしかったのではないか。旅人も朝から夕方まで歩き、宿に泊まっていたという記録を読むと、当時の人々がお化けや幽霊などの怪異を信じていたことの背景がよく分かる。
このところ、自民党の総裁選をめぐっての報道を見たり読んだりすると「政界、一寸先は闇」という言葉を思い出す。政界の闇には、果たしてどんなものたちがうごめいているのだろうか。