米沿岸警備隊、武装砕氷船を建造へ
北極海進出狙うロシアに対抗か
解氷が進む北極海の軍事的支配は近年、米国とロシアにとって重要な課題となっている。米沿岸警備隊のズクンフト長官は、最新の大型砕氷船に初めて重火器が搭載される予定であることを明らかにした。ロシアも大型砕氷船団を強化しており、北極海をめぐる新たな米露対立を懸念する声も上がっている。
ロシアは国連に、北極海の大陸棚の境界線の見直しを求めている。一部大陸棚はすでにロシア領だが、天然資源の豊かな沖合へ、さらに領海を拡大したい意向だ。
プーチン大統領は、ウクライナやシリアで軍事的進出を進めており、西側からは、ロシアが北極海でも軍事的プレゼンスを強めようとするのではないかと警戒する声が上がっている。
ワシントンのニューアメリカン安全保障センターの上級研究員ジェリー・ヘンドリックス氏(退役海軍大佐)は「ロシアは(北極海域の)領有を主張しようとしている」が、それは、米国と同盟国をこの海域から軍事的に排除し、北極点とその周辺の海底の資源採掘権を独占するためだと指摘した。さらに「他の地域でもしているように、北極でも領有を主張しようと積極的に行動しているとみるべきだ」と警鐘を鳴らした。
大型砕氷船の武装に対しては、資金不足の沿岸警備隊がこの海域での緊張の高まりに便乗して、高価で必要のない武装計画を進めようとしているという批判があるが、ズクンフト氏は、北極海の天然資源の採掘が容易になり、戦略的に重要なシーレーンが開かれる可能性もあり、武装は不可欠だと反論している。
沿岸警備隊が現在保有している砕氷船はわずか3隻。うち1隻は主に科学調査に使用されている。北極海に世界最長の海岸線を持つロシアは、少なくとも40隻の砕氷船を持ち、そのうちの4隻は原子力、16隻は中型砕氷船という。
ズクンフト氏は今月に入って開催された国防に関する会議で、5年以内に最初の新型砕氷船が出来上がり、費用は10億㌦以下であることを明らかにした。全体では、6隻の新型砕氷船を要求しており、うち3隻は最大級のものになる。
ズクンフト氏は「武装するための空間、重量、パワーを確保、今後、情勢が変わっても対処できるだけの攻撃能力を持つものにすることができる」と長期的視野に立った武装計画であることを明らかにした。
ロシア以外にも武装砕氷船を持つ、沿岸国はある。
ノルウェーの大型砕氷哨戒艦スバルバードは、ミサイルも迎撃可能なボフォース57㍉砲を装備。カナダ軍は、スバルバードをモデルに、新型のハリー・ドウルフ級哨戒艦を建造していることが報じられた。
デンマークのクヌート・ラスムッセン級哨戒艦はそれを上回る先進兵器を搭載しており、127㍉スーパーラピッド砲、機関砲2門を装備、対空ミサイル、MU90対潜水艦魚雷も発射可能だという。
ロシアは、巡航ミサイルを搭載した2隻の新型砕氷船の開発を進めている。2年以内に配備される予定という。
(ワシントン・タイムズ特約)