第3の政党設立を望む米国民
エルドリッヂ研究所代表、政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ
有権者の約半数が無党派
2大政党への失望・不満が拡大
最近、アメリカで新しい調査結果が発表された。それによると、62%のアメリカ人が第3の政党の設立を望んでいることが分かった。これは、歴史のあるギャラップ社の同様な調査では過去最高の数字だ。
この割合に驚く人は多いかもしれない。昨年12月に、本紙ビューポイントで、今後は米国で政界再編が起こると指摘した。
あまり知られていないが、「赤」(共和党の支持者)と「青」(民主党の支持者)で分かれていると思われているアメリカで「自分は2大政党のどちらにも属さない『無党派層』」と考える有権者が実は増えている。しかし、多くの人は選択肢が少ないために、2大政党の候補者に投票したり、最悪の場合は投票しなかったりするだけだ。
影響力持つ第3党不在
現在、国民の約50%が無党派層だ。2016年の大統領選挙の際には、アメリカの有権者の約45%弱が自分を無党派だと考えていた。これは、民主党と共和党のどちらの支持者よりも多い。従って、いつか新しい政党が誕生するか、有権者の皆は棄権して、民主主義が崩壊するしかなくなる。
無党派層には、少なくとも三つのタイプがある。一つ目は、無党派層でありながら、上記のケースのように民主党や共和党のどちらかの主要政党から候補者を選ぶタイプである。二つ目のタイプは、無党派でありながら、リバタリアン党や緑の党などの小さい政党に投票する人である。ただし、必ずしもその小政党に所属しているわけではないので、「無党派」という表現になっている。第三のタイプは、どの政党にも属さず、まったく投票しないこともある人々。彼らは、政治に関与はしていても、選挙や政治システムに対して信頼を失っている。
実際、1971年12月に設立された保守政党のリバタリアン党や、2001年4月に設立された左派政党の緑の党など、小規模な第3の政党は既に幾つか存在しているが、現時点では既存の2大政党に取って代わるほどの規模や影響力を持つ政党はない。
悲しいことに、米国内外の多くの人々は、この国に二つ以上の政党があることさえ知らない。それによって、政策的な議論は非常に限られており、選択肢は皆無に近くなってしまっている。
そのため、2大政党への失望と不満が非常に大きくなっている。別の言い方をすれば、主要政党への支持と信頼が非常に低いということだ。
今回の調査では、2大政党が国民を代表して適切な仕事をしていると考えるアメリカ人は、わずか33%だ。これは、世論調査開始以来、2番目に少ない割合となった。最も少なかったのは、オバマ大統領当時の13年10月で、26%を記録した。
最新の世論調査で、無党派層の約70%が第3の政党の設立を望んでいることは驚くことではない。しかし、興味深いことに、今回の調査では、共和党員の63%も第3党を支持していることが分かった。9月の世論調査で40%だったことと比較して、短期間でかなり増加している。
共和党の63%という現在の水準は、ギャラップ社がこれまでに調査した二つの主要政党のいずれにおいても最高のものだ。これまでの最高は、18年の民主党の支持者のもので、54%だった。
昨年9月の時点では、当時野党であった民主党員の52%がまだ第3の政党を希望していたが、大統領選、上院選、下院選で自党が勝利すると、その割合は46%に下がったが、それでもまだ高い数字だと言える。
注視すべき米政界再編
1935年に設立された分析・助言会社であるギャラップ社が、第3の政党の問題について初めて世論調査を行ったのは2003年のことだった。その時の第3の政党支持率は40%であったが、その後、着実に伸びている。
06年、08年、12年の選挙では、第3極が必要かどうかについてアメリカ人の意見は分かれていたが、この10年間で一貫して第3極を支持するようになってきた。例えば、13年と15年には支持率が60%に上昇し、17年には61%に達した。昨年9月には57%まで低下したが、今年は再び上昇し、前述の62%に達している。
人口構成、経済・社会状況の悪化で、アメリカの社会が常に変化しているが、政治がそれに対応し切れていないことが今回の世論調査ではっきりした。日本は、こうしたアメリカの状況や政治再編の可能性に注視すべきだ。











