“技術標準”めぐり米中が綱引き、韓国経済も綱渡り外交に直面
最近、太平洋を挟んで米ワシントンと中国福建省アモイでそれぞれ開かれた韓米日安保高官協議と韓中外相会談は安全保障分野とともに今後、5G、半導体、人工知能(AI)等、先端技術分野で米中の競争が韓国に及ぼす影響を凝縮して見せてくれたとの評価だ。
韓国は相変わらず米中の技術競争で中立を維持しているが、伝統的な同盟関係が明確に作用する軍事・安保分野と比べ、さらに難しい選択の圧迫をうけることになるとの見通しだ。
今回の韓米日安保高官協議と韓中外相会談で米中双方が見せた動きは、火の付いた技術競争と、その間に置かれた韓国の境遇を象徴的に見せている。
中国外交部は3日、韓中外相会談後の報道資料で、5G・直接回路・人工知能(AI)・保健協力(ワクチン)等を取り上げ、両国の経済協力を強化すると強調した。だが、安保3者協議開催前日の1日(現地時間)には米政府高官が「韓米日3国は半導体の核心技術国」とし、「この繊細な供給網を共通する規範と基準で安全に守るための方法を模索する」と言及していた。
米中が周辺国を自身の技術標準に引き込もうとするのは、この競争が世界1位をめぐり熾烈(しれつ)な争いを展開する米中経済の勝敗を分かつ尺度になり得るためだ。5GネットワークやAI技術は最近、中国が最も力を入れている分野の中の一つだ。
韓国はまだ技術・経済分野の米中競争でどちらか一方に立っているわけではない。米国との同盟関係が明確な軍事・安保分野とは違い、経済・技術分野での米中競争は、韓国がどちらか一方を選ぶのはいっそう容易でない。そうであるほど韓国だけの原則が必要だとの注文が出てくるが、この分野で明確な原則や慣行は作られていない状態だ。
韓国企業は政府がこの分野に対する立場をどのように整理するかに従って、相当な被害を甘受しなければならない立場だ。特に5GやAIなど先端技術を主力成長動力とするサムスン電子とLG電子など国内の半導体企業は困惑している。サムスン電子は12日に米ホワイトハウスが主要な半導体・自動車企業と最近の半導体不足に対する緊急対策を練り上げる会議に招かれた。半導体供給網の再編を進めている米政府がサムスン電子の対米新規投資を要求するとの観測が多い。
一方、中国も投資圧迫を強化するものと見られる。中国は韓国半導体の最大の輸出国であり、決して無視できない市場だ。財界関係者は、「程度と方法の差はあり得るが、米国と中国2強大国の技術・貿易関連の紛争が発生すれば、これは韓国経済に明らかな“赤信号”」だとして、「政府と経済界が一緒に不確実な通商・技術交流環境に備えた対応策を用意しなければならない」と語った。
(ホン・ジュヒョン、ナ・ギチョン記者、鞠箕然ワシントン特派員、4月6日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。
ポイント解説
経済でも米中間で股裂き状態
韓国は外交・安全保障で米国と中国との間に立って「あいまい戦略」を展開してきたが、経済・先端技術の分野でも米中の間で股裂き状態になりそうだ。
先端技術の標準づくりを米中が争っている中で、自陣営に韓国を引き込もうとする米中の働き掛けに韓国政府も経済界も右往左往している様子が記事からは伝わってくる。「対応策を用意しなければならない」式の記事の結び方はお決まりのものだが、具体策は何も思い付かないといった困惑がにじみ出ている。
わが国もこれを対岸の火事と眺めているわけにはいかない。韓国ほど深刻ではないが、対米、対中関係における外交・安保と経済関係の捻じれ状態は似たり寄ったりだ。ただ、安保では「インド太平洋戦略」という同じ船に乗っており、重要な役も担っていることから、迷いはないが、巨大化する中国の経済、特に先端技術標準は日本の産業界に選択を迫る時が来るかもしれない。
結局、ドルで世界を支配するか、人民元でするかの競争で、今後、電子通貨化が進めば、人民元決済で縛ってくるということもあり得る。デジタル人民元は「張り子の虎」にすぎないという見方もあるが、ならば安保同盟と表裏をなして先端技術標準、電子通貨の体制をこちら陣営でも整えなければならない。
韓国は歴史的に大陸勢力と海洋勢力のせめぎ合いの渦中に置かれてきた。左派政権が続くか、保守政権が奪還するかにもよるが、韓国が中国の誘惑を振り切れるだけの体制を整えるのは、自由陣営の責任でもある。
(岩崎 哲)