トランプ氏 徹底抗戦の構え崩さず 米大統領選
「大型訴訟を起こす」
米大統領選でバイデン前副大統領が「勝利」を宣言したのに対し、トランプ大統領は、不正があったとして法廷闘争を展開している。トランプ氏は15日、ツイッターで大統領選の違憲性を示す「大型訴訟を間もなく起こす」と訴えるなど徹底抗戦の構えを崩していない。
陣営 集計ソフトに照準
トランプ氏の陣営は、20以上の州で用いられたドミニオン社の集計ソフトに照準を合わせ、問題視している。同ソフトをめぐっては、全国で何百万もの票が同氏からバイデン氏に切り替えられたなどと一部で指摘されている。
トランプ陣営のパウエル法律顧問は同日、FOXニュースの番組で、同集計ソフトについて「選挙結果を操作するために設計されたものだ。いかなる場所でも決して使用すべきではない」と主張。トランプ氏の個人弁護士のジュリアーニ元ニューヨーク市長も同番組で、同社がベネズエラのチャベス前大統領らと関わりがあったとし、「南米の選挙で不正行為をするために使用されたものだ」と指摘し、国家安全保障上の問題として調査する必要があるとした。トランプ氏自身も13日、ツイッターで「全国で270万のトランプ票を削除した」などと訴えた。
疑惑は、同社のソフトを用いたミシガン州アントリム郡での集計作業中に、トランプ氏からバイデン氏に6000票が切り替えられた問題に端を発している。当局者はこれを「人的ミス」としているが、ジョージア州の投票立会人であるジョージ・ファボリト氏は宣誓供述書で、同ソフトの使用により同州でバイデン氏の票が「人為的に膨らんだ」と主張している。
一方、選挙を監督する連邦機関であるサイバーセキュリティー・インフラストラクチャーセキュリティー庁(CISA)は12日の声明で、「米国史上最も安全な選挙だった」とした上で、投票システムによって票が削除または紛失されたり、投票内容が変更されたという証拠はない」との声明を発表し、こうした疑惑を否定している。
これとは別に、トランプ陣営は、接戦となった州で法廷闘争を続けている。
トランプ陣営は9日、東部ペンシルベニア州で不正が行われた可能性があるとして連邦地裁に同州当局によるバイデン氏の勝利認定を差し止めるよう訴えた。
この中で、トランプ陣営はフィラデルフィアなどの都市で共和党側の選挙監視人が現場に近づくことができなかったため、開票状況を把握できなかったと主張。また、州法では提出後の郵便投票の修正が認められていないが、民主党が強い郡ではこれが行われていたと指摘した。17日に口頭弁論が予定されている。
またトランプ陣営は11日、目撃証言から成る234ページに及ぶ宣誓供述書に基づき、ミシガン州で「違法な集計が行われた」と主張。連邦地裁に選挙結果の認定を差し止めるよう訴えた。
証言によると、集計スタッフが同じ投票用紙を集計機で複数回処理したほか、期日を過ぎて到着した投票用紙を集計したり、投票用紙を違法に複製したとされる。
また、ジョージア州では、僅差だったことから、手作業による再集計が行われている。トランプ陣営は、ウィスコンシン州でも「結果の妥当性に深刻な疑問がある」などとして再集計を求めている。
トランプ陣営は主に多くの証言に基づいて、不正を裏付けようとしている。ただ元連邦検察官で保守派評論家のアンドリュー・マッカーシー氏からは「個々の票まで追跡できるような不正の証拠はない」との指摘も出ている。
法廷闘争が長引けば、その後の大統領選出手続きに影響を与える可能性もある。来月14日には50州と首都ワシントンで選挙人集会が開かれ、正副大統領候補に投票。その結果が来年1月6日の上下両院合同会議で正式に確認される。
一部の州が訴訟などで選挙人が確定せず、トランプ、バイデン両氏とも選挙人の過半数(270人)に達しない場合、憲法修正12条の規定により、下院で50州の代表が1票ずつ投票。過半数の26票を獲得した候補が大統領に選出される。
(ワシントン 山崎洋介)