バイデン候補絶賛の悪質メディア
エルドリッヂ研究所代表、政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ
不都合な事実には触れず
米誌、大統領選直前に情報操作
米大統領選を約2週間後に控えた10月19日、半世紀にわたって音楽や文化をはじめ、社会問題、政治問題などを扱う人気雑誌「ローリング・ストーン」が、野党民主党の大統領候補のジョセフ・バイデンを特集し、絶賛した。表紙にもなっている。「バイデンの時が来た」という大見出しの下には、「彼がアメリカを再建させる適任者」と書いてある。
米国では、新聞、雑誌、放送局などの既存メディアは特定の候補を支持することは多く、それほど違和感はないが、事実ではないことばかりを書いたり言ったりすることが多く、メディアそのものの質が問われている。どのメディアにもバイアスがあるが、真実を語らなければ、単なるプロパガンダにすぎない。
レイプ事件や人種差別
このローリング・ストーン誌の記事は匿名なのだが、バイデン陣営から受け取った原稿をそのままを載せたという印象が強い。嘘(うそ)を書いているだけでなく、不都合なことに一切触れず、情報操作をしているのだ。
世論調査やメディア分析を専門にする筆者からすれば、正直これほど酷(ひど)い例は見たことがない。
さらに驚くのが、53年近くの歴史を誇るローリング・ストーン誌がやったということだ。ドナルド・トランプが繰り返し批判してきた「フェイクニュース」そのものだ。どうやって「嘘つき」のトランプに、嘘でバイデンを褒めるメディアを使って勝つつもりだろうか。
記事では、バイデンは下品なトランプと対照的だと書いているが、とんでもない。バイデンによる複数のレイプ事件や疑惑をはじめ、彼の数多くの暴言、人種差別行動、過去の選挙期間中の嘘(学歴詐称)、英国人の政治家やロバート・ケネディの演説の盗用などを取り上げていない。そして、バイデンの次男ハンターによる数多くの金銭疑惑も触れなかった。第三政党の候補を支持する筆者からすれば、バイデンはトランプよりはるかに悪いか、少なくとも同じくらい問題がある。
対してローリング・ストーン誌は、バイデンには「能力」があり、「思いやり」があり、「安定」していて「誠実」で「自制」があることを証明しているという。中立あるいは少なくとも事実に基づいて報道すべきメディアがこんなに称賛していいのか。
例えば「能力」の評価だが、多くの黒人を刑務所に入れているクライム法を成立させ、金融クラッシュを招いた金融街の規制緩和を促し、多くの混乱と犠牲を招いたイラク戦争に賛同し、北アフリカの混乱を招いたリビアの崩壊を指示し、リーマンショック後、ローンを返済できずに510万世帯が追い出されたことを黙認した。こうしたことは「能力」があると言えない。昨今の歴史では、全ての政治、社会問題や国際情勢に関する決定においてバイデンは間違っていた。
二つ目の「思いやり」で言えば、若者が苦しんでいる経済的な状況に対して「同情できない」とする発言や、中南米系の有権者が移民政策の改善を求めた際、「それならトランプに票を入れなさい」とか、トランプさえ言わない発言を連発している。
あまり知られていないが、バイデンが副大統領を務めたオバマ政権は、トランプ政権の約2倍の不法移民を強制出国させ、家族の分離を引き起こした。また、国境で催涙ガスを使用することを許可し、移民の子供の隔離政策を進めた。また、難民問題を悪化させた中米ホンジュラスでのクーデターへの参加も促し、民間人を狙ったドローンによる殺害や拷問も容認した。
「安定」はどうか。認知症が進んでいる状態で、演説文を正しく読めず、発言を忘れたり、途中で正反対のことを言ったり、聞く人にとても不安を与える。彼の陣営がそれに気付くと、なるべく取材の機会を減らすようにした。現在は薬で何とか乗り越えたとしているが、時間が経(た)つにつれ、だんだん悪化していくのは周知の通りだ。
「誠実」も「自制」もなし
「誠実」で言えば、バイデンほど腐った政治家はほとんどいない。前述した強姦(ごうかん)や盗用の問題に加え、専門性のない次男が2000年代から医薬会社の顧問を務め高い報酬をもらっていたが、上院議員の父親が関係する法案を可決させた。またウクライナや中国から多額の金をもらっており、エネルギー業界とも癒着している。
ここまで見てきたように、バイデンは「自制」がない。同じ間違った政策や嘘を言う癖を繰り返している。結局のところ、バイアスだらけのメディアも自制がないようだ。
(敬称略)